こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜

12.謝罪

 こんな人、相手にするだけ時間の無駄な気がする。
 おそらくこちらが何を言っても聞かないタイプだろう。
 遥は大きく息を吐くと、目の前の緑茶を一口飲んだ。

「まず櫻井さんは今回の件をどこまで把握されているのでしょうか?」
 どうせ契約が取れなかった部下の言い訳を鵜呑みにしたのだろう。
 契約するかどうかを決めたのは白河なのに、他社に乗り込んでくるなんてどうかしている。

「シラカワ製作所へ行ったら契約を奪われたあとだったので、昨日の出来事も教えてもらえずに追い払われたと聞いています」
「そうですか。それで櫻井さんはシラカワ製作所へ行きましたか?」
「いいえ」
 本当に何をしにきたのだろうか?
 ただ文句を言いにきただけ?
 昨日何があったのか、どうして契約を取られたのか理由を知りたいわけではなさそうだ。
 やっぱり時間の無駄だな。

「M-ADCさんはたくさん契約が取れているのですから、ひとつくらい契約が取れなくてもいいではありませんか」
「そういう問題では」
 チッとしっかり聞こえるほどの舌打ちもやめましょうね、勇気さん。

「工場はたった1回納期を守れないだけで、大変なことになるそうです」
「そのくらい知ってますが?」
 だからなんだと苛立つ櫻井を見ながら遥は立ち上がった。

「御社の昨日の対応に不信感を持っただけでは? 私が言えるのはそれだけです。お引き取りください」
 二人に睨まれたって怖くないし。
 遥が扉を開けながらニッコリ微笑むと、回答に納得できなかったのか櫻井が詰め寄った。

「このままですむと思うなよ」
「それは脅し? そちらこそ、早く会社に帰って現状把握することね」
 隼人は「すぐに改善させる」と言ってくれたから、近日中にはきっと情報が回るはずだ。
 知り合って間もないけれど、シラカワ製作所のパソコンを直してくれたし、仕事では隼人を信頼していいと思う。
 
「どうぞ、お引き取りを」
 そして二度と来ないでください。
 怒りながら帰っていくM-ADCの二人を見送ることなく、遥は会社の扉を閉めた。

「なんなの、あいつら! 自分の営業成績しか考えていないなんて最低!」
「ハルカちゃん、あの人たち何しに来たの?」
「契約を横取りされたって文句を来たのよ!」
 そもそもあっちが先に横取りしようとしたくせに。

「カッコ悪いね」
 富樫の素直な言葉に遥はうんうんと同意する。
 大きな会社になればなるほど、成果主義というのか個人の能力主義というのか、評価制度も難しくなっていくのだろうなと遥は目を伏せた。
 
    ◇
 
 トラブルからわずか4日後、シラカワ製作所との契約は無事に更新された。

「えっ? 5年契約?」
「そ。5年!」
 ダメもとで1年契約と3年、5年の契約書を作って持って行ったと佐久間は笑う。
 
「佐久間~! あんた天才!」
「白河のじーさん、めっちゃハルカに感謝していたぞ」
 息子にも頭を下げられたと佐久間は契約時の状況を遥に報告した。

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