こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜
「昨日、シラカワ製作所は大変なことになるところだったのよ」
「うちのせいじゃないし」
「いいえ。あなたの会社の取説動画のせいだと判明しているわ」
「はぁ? 言いがかりはやめろよな」
 つきあってられないと男性は舌打ちしながら工場を出て行く。
 
「親切そうな人だと思ったんだが、見る目がなかったな」
 いい年して恥ずかしいと頭を掻く白河に、遥は困った顔で微笑んだ。
 
 実際、うちの会社に何かを売り込みに来る営業にもあんなタイプはよくいる。
 最初はニコニコしていて丁寧に説明してくれるが、こちらが難色を示した途端、時間の無駄だと怒り出したり、買う気がないならもっと早く言えと言われたこともある。
 たまに親切な営業が来たら当たりだと思ってしまうほどだ。

「白河さん、あの営業の名前ってわかりますか?」
「あぁ、ここに名刺が……」
 白河に名刺を見せてもらった遥はスマートフォンで写真を撮った。
 姓が勇気なんて珍しい。
 一度で覚えてもらえそうだが、こういうミスした時は痛いよね。

「勇気和人……って、名前の通り本当に勇気ある人だったね」
「どういうこと?」
「だってハルカちゃんにあんなに文句言うなんて」
「それはどういう意味よ、富樫」
 富樫の頭をぐりぐりすると、痛い痛いと富樫は笑う。
 笑っているんだから痛くないでしょ!
 
「違約金も取られなくて済んだし、何から何まで本当にありがとう。遥ちゃん」
「引き続きツクモをよろしくお願いしますね、白河さん」
 会社に戻ったらすぐ佐久間に契約の準備を頼まなくてはと思いながら、遥は富樫と一緒に会社へ。

 文句を言いに来た割には、やけにあっさり引き下がったなと思ったが、やっぱり最低な男だった。
 上司を連れてツクモソフトに現れたM-ADCの勇気の姿に、遥は盛大な溜息をついた。

 仕方がないので社長室に入れてあげたけれど、悪かったわね、古くて狭くて。
 上司も勇気もツクモソフトを見下していることはすぐに分かった。
 一応お茶くらいは出してあげるけれど、とっとと帰ってほしいわ。

「M-ADCの櫻井です」
「九十九です」
 名刺交換してあげたけれど、こんな女が社長? と鼻で笑われたのはきっと気のせいではない。
 上司も部下も最低ね。
 この様子では、M-ADCのCEOである隼人が私と契約上の婚約関係にあるということは知らなさそうだ。
 半年間だし、まぁ社内に知らせるほどではないか。
 私もツクモの社員たちには話していないし。

「弊社のせいでシステムが止まったなんて嘘をついてまで契約を横取りするのは、さすがにルール違反では?」
 潰れそうだからって最低ですねと言われた遥は、部下が部下なら上司も残念な男だなと眉間に皺を寄せた。
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