エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
エピローグ
それから一ヶ月が経った。
伯父は関係会社の不正融資で、正式に立件された。裁判はまだ先になるが、関係会社はすでに業務を停止している。伯父夫婦は今、弁護士と対応に追われているらしい。
麗はパリから無事に帰国して現在は伯父夫婦とは会うことはせず、凛くんに仕事の斡旋をしてもらい住み込みの仕事を始めるのだと航大くんから聞いた。
そして、クリニックの借金は航大くんが清算してくれた。
父は『そんなことをさせるわけにはいかない』と何度も言った。頑固な人だから、何度言っても同じことを繰り返した。
航大くんも負けずに『受け取ってください』と繰り返した。同じくらい頑固な二人が、しばらくそのやり取りを続けた。航大くんの方が根負けするかと思ったけれど、全然そんなことはなかった。
むしろ父の方が、少しずつ言葉に詰まっていくのがわかった。
決着がついたのは、航大くんが『将来の義理の父にする投資です』と、まったく悪びれずに笑いながら言った時だった。
『……では、代わりにたまにご飯を奢ってください。家族で食事に行きましょう』
父はしばらくの間、言葉を失っていた。何か言おうとして、でも出てこなくて——それから、深く頭を下げた。長い沈黙の後だったから、余計にその重さが伝わった。
その場にいた私は、どちらの顔も見られなくて、窓の外を向いていた。窓の外の空が、やけに青かった。早く終わってほしいような、でも終わってほしくないような気持ちで、ただ青い空を見ていた。