迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
第32話 対峙(シドリウス視点)
「あの子は昔から親を困らせるのが上手なんですよ。まあ、あんな娘でも私からしたら可愛い我が子に違いありません。それで、もしあなた様があの子を気に入ってくださるのなら、是非とももらってくださいませんか?」
「言われずとも、彼女の返事次第では俺がもらい受ける。お前の許しがどうであろうとな」
シドリウスの返事を聞いて、ハビエルは嬉々とした。
「そうですか、そうですか。でしたら問題ありません。私は娘が選んだ人なら手放しで喜べる人間です。父親ですからね。それでは早速、結納金の話に移りましょう。あの子は私が手塩にかけて育ててきた大切な娘です。愛し合う男女を引き裂きたくありませんが、結納金の金額が不十分であれば娘が不自由な想いをすると判断させていただきます。心を鬼にして、私は娘とあなたを引き裂かなくては……」
「俺はいつまで茶番に付き合えばいい?」
話を続けるハビエルに向かって、シドリウスの拳が飛んだ。
拳はハビエルの頬を掠めると、壁にめり込む。ミシリという不気味な音が辺りに響いた。
「ひ、ひいぃっ!!」
情けない悲鳴とともにハビエルが腰を抜かす。
「いつまでもベラベラと。減らない口だな」
シドリウスが壁から拳を離すと、パラパラと壁が崩れていく。穴は空いていないが、内部の木材が顔を出していた。
殺気の籠もったアイスブルーの双眸がハビエルを捉える。
蛇に睨まれた蛙の如く、怯えきったハビエルはシドリウスから目が逸らせない。