迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~
「私もあなた様が誰なのか大凡の見当がついております。隣にいらっしゃるのはエリンジャー公爵令息のヒュドー=エリンジャー様ですよね? つまり、あなたはエリンジャー家の関係者でしょう?」
「……まあ、そんなところだ」
シドリウスは顎を引き、話を合わせた。
この手の相手は正直に正体を話せば面倒なことになる。まずは適当に話を合わせておいて、何を企んでいるのか探った方が良さそうだ。
目を三日月の形にするハビエルは「やはり」と独りごちる。
「実をいうとフィリーネは姉のミリーネと喧嘩していましてね。衝動的に家を飛び出したまま、帰ってこなかったんですよ。心配してうちの騎士団にも捜索させたのですが見つからず……途方に暮れておりました。まさかあなた様が保護してくださっていたとは。心から感謝申し上げます」
「普通は近隣の自警団などにも捜索願いを出すと思うが?」
「それも考えましたが大事にはしたくなかったのです」
ハビエルの猿芝居に虫唾が走る。
(世間体を気にして捜索願いを出さなかっただけだろう。心の内が透けて見える)
会話を重ねるにつれてシドリウスの目が鋭くなる。
側にいるヒュドーは柔和に微笑んで話を聞いているが、その目は死んでいた。これからハビエルがどうなるかを予期しているのだ。
だが、当の本人はまるで気づいていない。
ハビエルは大袈裟にため息をつくと、額に手を置いて嘆いた。