迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~

第37話 それからの生活



 ***

 窓の外からチチッと小鳥のさえずりが聞こえてくる。
「ううん……」
 朝の空気を感じて、フィリーネはゆっくりと瞼を開けた。

 薄紅色の瞳に映るのは、こちらをじっと見つめてくる、恐ろしいほど整った顔。
 夢とうつつが判断できず、ぼーっとその相手を見つめ返していた。
 長くて細い指が、フィリーネの頬をそっと撫でる。

「おはよう、フィー」
 優しい低い声が耳朶に触れる。
 フィリーネの微睡んでいた意識がそこでようやっと覚醒した。

「……え? シドリウス様!! いつお戻りに!?」
 うっとりとした表情を浮かべるシドリウスをよそに、上体を起こしたフィリーネは困惑した。
 というのも、フィリーネと一緒にエリンジャー家の舞踏会から屋敷に帰ってきたシドリウスは、すぐに空都へと飛び立ってしまったのだ。

 それから二ヶ月経っても一度も戻っては来ず、フィリーネはカロンと二人で生活をしていた。
 シドリウスが留守の間、フィリーネの生活にも変化があった。
 紫紺蝶と共に、ランドレイス公爵の夢塞病を治す活動を始めたのだ。

 ストレスや精神面から発症する夢塞病は光魔法では治せない。闇魔法のみが通用する。
 舞踏会の一件で、フィリーネは紫紺蝶と精霊契約を結んではいないものの、闇魔法が使えることに気づいた。

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