恋は手のひらの上で
この手だった
発売から一か月。
保湿ジェルの売上は、予想以上に伸びていた。

社内の共有モニターに映るグラフは、きれいな右肩上がりを描いている。
朝のオフィスの白い光の中で、その線だけがやけに鮮やかだった。


「西野、見た?」

後ろから声がする。
振り向くと、高橋がコーヒー片手に立っていた。

「うん。さっき」

「やったじゃん!」

そう言われて、私は少しだけ笑う。

こんなに素直に喜んでくれている高橋と同じように笑えたらよかったのに。

「私だけじゃないの。みんなのおかげだよ」

本当は、もう少し違う気持ちがある。

もちろん嬉しい。
すごく嬉しい。
あれだけ時間をかけて作ったものが、ちゃんと届いている。

それが、ちゃんと結果になっている。
それがどれほどすごいことか。

処方の調整。
資料作り。
何度も繰り返した打ち合わせ。

その全部が、ようやく形になった。


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