引きこもり令嬢は皇妃になんてなりたくない!~強面皇帝の溺愛が駄々漏れで困ります~5
プロローグ その知らせは突然に
皇妃の初単身外交も大成功に終わった。
引き留められて長居していた皇妃が、迎えに行った夫の皇帝一団と帰国したことを受けてエンブリアナ皇国内も平和そのものだ。
皇国を守るようにして行われた皇妃の大魔法。
国境を徘徊している魔獣たちが国内に入る心配もない。消えない大魔法であるとは説明されたものの、皇妃という存在が各地にもたらしている安心感は、実際に『魔物がいない』という初めての現状を体感したことで、国民たちにとって大きなものとなっているのだ。
まだ日中は寒さを感じない暖かな陽気。
こんな秋を、今年は魔獣に怯えることなく収穫も含めて楽しもうではないかと、地方も都市も穏やかな空気が漂っている。
それは、秋の社交シーズン開幕からしばらく経った王都もそうだった。
宮殿で社交を楽しむ貴族たちの上品な笑い声。
皇妃の人気っぷりもあって忙しさに追われている政務官たちも、故郷の土地で行われている収穫祭のことなど歩きながら同僚とのんびり話す光景が見られる。
宰相府も多忙ながらそんな空気はあった。
「よい秋の気候に恵まれましたね」
宰相府の奥にある宰相の執務室で、一人の部下が両腕に抱えていた大量の書類を宰相の机に置いて、そう言った。
どんっという音を立てて追加になった新たな書類の山を、宰相は思わず他の山と見比べるようにして眺める。
「まぁ、そうだな」
ひとまず宰相はそう答えた。
部下に道を譲って隣に避けていた皇妃の第一専属護衛騎士アインス・バグズもまた、書類の山がいくつあるのか目で数え直している。
「アインス殿、すまない。あのお方のことだから戻り次第目を通されるだろう、あとは決裁だけとなっている書類だけでも先に皇帝陛下のもとに持っていっていただけるか」
「もちろんです」
「陛下の護衛部隊の副隊長にこんな仕事をさせるのはあれなんだが……」
「本当にお気遣いなく。皇帝と皇妃、どちらも補佐できるよう特殊な位置づけにいますので、移動のついでにこういうことができるのも光栄ですよ」
アインスは淡々と答え、宰相が示した書類の山の一つを引き寄せる。
それを目で追いかけていた部下が、「本心が見えない……」とつぶやく。真顔なので適当なのか真心がいちおうこもっているのか、分かりにくい。
引き留められて長居していた皇妃が、迎えに行った夫の皇帝一団と帰国したことを受けてエンブリアナ皇国内も平和そのものだ。
皇国を守るようにして行われた皇妃の大魔法。
国境を徘徊している魔獣たちが国内に入る心配もない。消えない大魔法であるとは説明されたものの、皇妃という存在が各地にもたらしている安心感は、実際に『魔物がいない』という初めての現状を体感したことで、国民たちにとって大きなものとなっているのだ。
まだ日中は寒さを感じない暖かな陽気。
こんな秋を、今年は魔獣に怯えることなく収穫も含めて楽しもうではないかと、地方も都市も穏やかな空気が漂っている。
それは、秋の社交シーズン開幕からしばらく経った王都もそうだった。
宮殿で社交を楽しむ貴族たちの上品な笑い声。
皇妃の人気っぷりもあって忙しさに追われている政務官たちも、故郷の土地で行われている収穫祭のことなど歩きながら同僚とのんびり話す光景が見られる。
宰相府も多忙ながらそんな空気はあった。
「よい秋の気候に恵まれましたね」
宰相府の奥にある宰相の執務室で、一人の部下が両腕に抱えていた大量の書類を宰相の机に置いて、そう言った。
どんっという音を立てて追加になった新たな書類の山を、宰相は思わず他の山と見比べるようにして眺める。
「まぁ、そうだな」
ひとまず宰相はそう答えた。
部下に道を譲って隣に避けていた皇妃の第一専属護衛騎士アインス・バグズもまた、書類の山がいくつあるのか目で数え直している。
「アインス殿、すまない。あのお方のことだから戻り次第目を通されるだろう、あとは決裁だけとなっている書類だけでも先に皇帝陛下のもとに持っていっていただけるか」
「もちろんです」
「陛下の護衛部隊の副隊長にこんな仕事をさせるのはあれなんだが……」
「本当にお気遣いなく。皇帝と皇妃、どちらも補佐できるよう特殊な位置づけにいますので、移動のついでにこういうことができるのも光栄ですよ」
アインスは淡々と答え、宰相が示した書類の山の一つを引き寄せる。
それを目で追いかけていた部下が、「本心が見えない……」とつぶやく。真顔なので適当なのか真心がいちおうこもっているのか、分かりにくい。
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