この恋、予定外。
人間だったんだ
朝のオフィスは、まだ少し静かだった。


テーブルの上には、小さなポンプボトルが並んでいた。
白いラベルに、黒いマジックで
試作07
とだけ書かれている。

Last Fitの、試作07。
開発部が作ったベースメイクの試作品だ。


私はその列を眺めながら、思わず腕を組んだ。

「なんかちょっと緊張してきました」

ぽつりとつぶやくと、向かいに座っていたマーケティング部の女性が笑った。

「分かる。これ、顔に塗るんだもんね」


─────そう、静かなオフィスで賑やかなのは、たぶんこの会議室だけ。


私たちの横では、営業事務の子がすでに試作品のボトルを手に取っているところだった。


ここに集まったのは、営業部、マーケ部、事務。
部署バラバラの女性が集められている。

全員、早めに来てもらったというのに、朝から妙にテンションが高い。

いや、正確に言うと。
女性社員が化粧品の試作品を前にすると、こうなる。
これはもう、どうしようもない。


私は苦笑しながらテーブルの端に立っている高橋さんをちらりと見た。

壁際に腕を組んで、無表情で佇んでいる。

そしてやっぱり、やる気がなさそう。
ネクタイの緩みが、ものすごく彼のだるさを象徴しているみたいだった。

ふと目が合った。
すぐ逸らされた。
相変わらずの態度である。


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