【執着兄弟の溺愛シリーズ】内緒の三つ子を出産したら、執念で見つけ出した凄腕パイロットから重たい独占愛を刻み込まれる
第三章 募り続ける想い~氷室翔真~
この日、イタリアから日本までの長旅の終着点である羽田空港が目前に迫っていた。
コックピットのフロントガラス越しには、太陽に照らされた東京湾の水面がキラキラと輝いていた。片道十二時間に及ぶ長旅だった。
日本に戻って来たと安堵する一方、無事に着陸するまでは気が抜けない。
地上までの距離が迫り着陸準備に入るために高度を下げた時だった。
ドスンッという鈍い衝撃が機体に走ったと同時に、ほんのわずかに機体が左側に傾いた。
「うわっ!」
 隣で副機長の早乙女(さおとめ)が短く叫んだ。
「ば、バードストライクですかね……」
 早乙女が渋い表情を浮かべる。早乙女は優秀だがまだ二十八歳と若く、副機長になり立てで経験も浅い。
「だろうな。多分、左エンジンに吸い込まれた」
 言葉を交わしながら早計器パネルに目をやる。警告灯は点いていないが、振動計の数値が上がっている。
 バードストライクとは航空機と鳥との衝突を意味する。鳥の種類やサイズに関わらず、バードストライクは航空機に重大な影響を及ぼす恐れがあり、パイロットは誰しも肝を冷やす。
「ゴーアラウンドしますか?」
 早乙女が緊迫した様子で尋ねる。チラリと横目に早乙女を見ると、動揺しているのかその横顔は強張っていた。
 ゴーアラウンドとは、より安全に着陸するために飛行機を再上昇させて旋回し、着陸をやり直すことを言う。バードストライクの場合にも有効だ。
「いや、しない。この振動からして左エンジンのファンブレードが欠けたのかもしれない。そうだとしたら機体を急上昇させたら左エンジンがバラバラになるかもしれない。そうなれば火災は避けられない」
「そんな! じゃ、じゃあどうしたら……!」
 俺は管制塔に飛行機の状況を報告した後、明らかに冷静さを失っている早乙女に「早乙女、落ち着け」と声を掛けた。
「俺だけでなく、お前だって今までたくさんの厳しい訓練を積んできただろう。それを今生かさなくてどうする」
 俺の言葉で早乙女がハッと我を取り戻す。
「俺とお前はこの飛行機に乗る全員の命を預かっている。俺ひとりの力じゃ無理だ。お前の力を貸してくれ」
「はい! 分かりました」
 早乙女の目に光が宿ったのを見届け、俺は操縦桿を握り直した。
 その横で早乙女は機内の管理と着陸準備に備える。
 機体は今も小刻みに揺れている。
 乗客が不安がっていることは想像に容易い。俺はマイクを掴み乗客へアナウンスを入れた。
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