【執着兄弟の溺愛シリーズ】内緒の三つ子を出産したら、執念で見つけ出した凄腕パイロットから重たい独占愛を刻み込まれる
『どうした。お前が電話かけてくるなんて珍しいな』
「忙しいのごめんね。今、ちょっと時間ある?」
『ああ。ちょうど当直明けで家に着いたところだ。で、どうした?』
「うん……実は相談があって……」
 三つ子を妊娠した可能性があると告げると、兄は冷静に『相手の男は?』と尋ねた。
「事情があって彼には言えないの」
『言えないって何だよ。そんな無責任なことあるか。子どもはお前ひとりじゃできないんだぞ』
 電話越しで兄が憤ったような声を上げる。
「それは分かってる」
『で、お前はどうしたいんだ? 産みたいのか? それとも……』
「私は……」
 翔真さんのことを考えると、今も胸が痛んで苦しくなる。既婚者でありながら私を欺いた彼を憎むべきだ。なのに、私は今も彼を愛しているのだ。
 この先、彼以外の誰かを愛することはないだろう。
 彼との未来は途絶えたけれど、彼を愛した証が私のお腹に宿った。
 もう二度と会うことはない翔真さん。彼へ向ける愛情を三つ子に捧げたら……。
「私は産みたいって思ってる。だけど、私ひとりで三人を育てられると思う……?」
 尋ねると、兄はやれやれと息を吐いた。
『そんなことを人に聞いているうちは無理だな。例え夫婦が揃っていても三つ子を育てるのは大変なことだ。ましてやひとりでなんて、相当な覚悟がいるんだぞ』
「そうだよね……」
 兄の言葉はもっともで、私はギュッと唇を噛みしめる。
『でも、お前がどうしても産みたいって言うなら、俺が協力してやる』
「お兄ちゃん……。本当にいいの……?」
 兄は独身ながら、救急医として日々忙しくしている。そんな兄に頼っていいのだろうかという気持ちが湧き上がる。 
『ああ。その代わり、三人を幸せにするっていう覚悟を持てよ。いいな?』
 兄の言葉に背中を押される。
 例え父親がいなくても、私がその分まで愛情をたっぷり注いで育てよう。
「ありがとう。私……必ずお腹の子どもたちを幸せにしてみせるから」
 産もうと決意した私は、兄にハッキリとそう告げた。

 それからは体調に気を付けながら仕事を続けた。
受け持っていた年長組の子どもたちも無事に卒園し、四月からは担任を持たずにクラス補助となった。
ありがたいことに、保育士仲間も私の妊娠を知り協力してくれる。
そして、六月。
私は医師である兄の助言で双子や三つ子の妊娠や出産に熟知している医師のいる大学病院で出産することになった。お腹の子が三つ子ということもありリスクもあるため、あらかじめ管理入院することになった。
そして無事、三人の男の子を出産した。
「ふえっ、ふえっ」
 ぼんやりとした意識の中、小さな泣き声を上げる三人に胸が熱くなり、喜びが込み上げてきた。それと同時に、母としてこの子たちを立派に育てなくてはならないという使命感に駆られた。
 子どもには晴翔(はると)、奏翔(かなと)、琉翔(るいと)と名付けた。
 退院後、しばらく私は兄の暮らすマンションにお世話になることになった。
 救急医として働く兄は、自身が働く病院に事情を説明して勤務時間などの調整をしてもらい、私を支えてくれた。
 ミルクや沐浴、オムツ替えなど、兄は手際よくこなして私を助けてくれた。
 さらに母体を回復させるためにはたっぷりの栄養が必要だと、毎食の食事はできるだけ手作りし、私が体を回復させられるように努めてくれた。
 まるでスパダリのような兄に私は心から感謝した。
『お兄ちゃん、これでいつでもパパになれるね』
 私がふざけて言うと、『俺に相手がいないって分かってて言ってんだろう!』と苦虫を噛みつぶしたような顔をしていた。
大人になってから、兄とは定期的に近況報告のために連絡を取り合う程度だったが、今ではグッと密な関係性になった。私がアパートに戻った今も、兄はあれこれと私に力を貸してくれる。
三人の甥っ子を自分の子どものように大切に思ってくれているのが伝わり、私は心から兄に感謝した。
 育休を終えると、園長の恩情で保育士として働く保育園に三つ子も通えることになった。
何かあればすぐに駆け付けられる体制も整えてもらい、周りの協力に助けられつつ、私は三つ子を必死になって育てた。

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