配信終了後、幼馴染実況者の本性が悪すぎる
恐れていた事態
週末の20時半。
私は、自分の部屋で鼻歌を歌いながらパソコンを再起動させていた。
今日は、凪が見つけてくれたゲーム「ゆめうさぎのナイトメア」の実況をする日。
それに加えて、グッズの宣伝もする予定だ。
デスクに置いてる、先日試作品で届いたグッズ達が目に入って、思わずニマニマしてしまう。
今回、グッズのキャラデザは私が担当した。特にこだわったのは、ナギのデザイン。
絵心はないため、イラストレーターさんに「こんな感じでお願いします!」と表情なども細かく伝えて描いてもらった。
少しだけクールな目元と、少しの微笑。
穏やかそうにもクールにも見える絶妙な表情。その仕上がりにすごく満足で、ふふっと笑ってしまう。
それからパソコンへと視線を移し、
マウスでカーソルを動かした。
いつものように音量やマイクの調整、ゲーム画面設定をしていく。
――その時、
「ん……?」
左クリックを押したけど、反応がすこし鈍い。
もう一回カチッと押す。すると、問題なくゲーム画面が表示された。
そのあとも、もう一回同じことがあった。
けれど、そのあと問題なかったため、そのまま気にせず進める。
今回のゲームは、キーボード操作メインで進めるタイプのものだったからだ。
そして、設定を終えた瞬間。
「あっ」
通信アプリの通知が届いた。
《通話中 ナギ》
すぐに私もアプリに入る。
「はいはーい!ナギ、どう?聞こえる?」
『ああ』
「準備は?」
『いつでもいける』
「おっけー!!」
そんな配信前の緩い会話を交わしたあと、
時間が来るのを待つ。
今日はグッズ販売の予告をするため、
実況後にお知らせがあることを事前にSNSで告知していた。
そのせいか、いつも以上にコメント欄は盛り上がっていた。
《楽しみーーー!!》
《週末くるの待ってた!》
《お知らせってなんだろー?》
《なんの告知かはやく知りたい!!》
そんなコメントでいっぱい。
ふふっ。
みんな楽しみにしてくれてる。
グッズ見せたらどんな反応するかなぁ。
想像するだけで、口元が緩む。
そうしているうちに、アラームが鳴り、
時計に視線を移すと20時59分になっていた。
10、9、8、7――…
心の中でカウントダウンをする。
「じゃあ、ナギいくよ?」
『ああ』
いつもの冷静な声を合図に、
右下の配信開始ボタンを押した。
そしてひとつ息を吸った後。
「こんばんはー!フウです!!」
『ナギです』
「みんな、今日も見にきてくれてありがとう〜!!なぎふぅチャンネル今日も楽しくやっていきます!!」
いつも通りに挨拶をすると、
《こんばんはーー!!》
《なぎふぅ大好き》
《楽しみ楽しみ楽しみーーー!!》
コメント欄が一気に流れ出す。
「早速ですが、今日のゲームを発表します!」
でん!っとゲーム画面を出す。
「タイトルは『ゆめうさぎのナイトメア』。表紙可愛くない!?」
《可愛いーー!!》
《ドット絵好き》
《これ、ホラーゲーム?》
「おっ!鋭いね〜。ファンシーな見た目だけど、ホラゲだよー!
ちなみに、今回のゲームはナギが選びました!」
なぜか私が得意げに言うと、凪が軽く笑う。
『うん。フウちゃん、こういう可愛い絵好きかなって』
あまりにもナギがサラッと言うものだから。
嘘つけーー!!
私が叫ばないやつ探したら、これに行き着いたんでしょーが!
すぐさま心の中で盛大にツッコミをいれた。
けれど、そんな裏事情なんて知る由もないリスナー達は、案の定。
《ナギくん優しい好き》
《常にフウちゃんのために行動するナギくん》
《やっぱり、付き合ってるんだよね?そうだよね?》
コメントが鬼の速度で流れる。
たった一言でこの反応。
ナギ人気の凄さに改めて感心する。
そしてそのあと、気を取り直して、
実況に入っていく。
今回のゲームのお話は、
道端でうさぎのぬいぐるみを拾ったことをきっかけに、兄妹が“夢の世界”に閉じ込められてしまう。現実へ戻る扉の鍵を探すため、夢世界で謎を解いていくというもの。
脅かし要素はほぼないそうだ。
うんうん。
確かにこれなら、私が叫ぶ要素皆無かも。
「これ、ホラゲーだけど、
ミステリー要素強そうなので!
今日の私は淑やか担当でいきたいと思います!!」
そう力強く言った。
すると。
『……はっ。淑やか…』
凪が吹き出した。
え……。
私は、思わず少しだけ息を呑む。
それは、“ナギ”じゃない笑い方だったから。
すると、コメント欄は――
《え、このナギくんの笑い方珍しい》
《なんか、年相応の男子高校生感あって好き》
《あのフウちゃんが淑やか担当w
これはナギくんもツボるよ流石に》
そんな好意的な言葉で溢れた。
じわっと胸の奥が嬉しくなる。
「こらー!ナギー?
どうして笑ってるのかな?」
『ふ。ごめんごめん。ちょっと普段のフウちゃん思い出して……っ』
「笑いすぎ!!」
そう言いつつ、つい声に嬉しさが乗ってしまう。
素の凪をちょっとだけ知ってもらえた気がして。