配信終了後、幼馴染実況者の本性が悪すぎる
***

「今日はごちそうさまでした〜!美味しかったです!!」

夕飯を食べた後、しばらくまったりしてたら、
あっという間に時間が過ぎた。
玄関で靴を履き、
見送りに来てくれたおばあちゃんへ笑顔を向ける。

「こちらこそ。今日はありがとうね楓花ちゃん。またいらっしゃいね」

「はい……!!ぜひ!!」

この美味しいご飯を食べられるなら何度でも……!

そう思っていると、先に靴を履いた凪が引き戸に手をかけた。

ふたりで並んで外に出ると、すっかり陽が落ちて、暗くなった空には月がぽっと浮かんでた。

「てか、凪。
ほんと送ってくれなくてもいいのに、
全力で走れば一分だよ?」

「じゃあ走って帰れって言いてぇとこだけど……外、暗いからな。一応、お前女だし」

「一応??」

「一応」

「おい」

ほんと、一言も二言も多い……!!
ちゃんと睨んでおく。

けど、こんなに近くに住んでるのに、暗い時、何だかんだ凪はこうやって家まで送ってくれる。変に律儀なところは昔から変わらない。

「グッズいい感じで出来上がってたし、次の配信の時に宣伝する?」

「そうだな。本格的に募集かけるのはまた後日にするとして、告知くらいはしとくか」

「だね……!みんな喜んでくれるかなぁ」

呟きながら空を見上げる。
月のまわりに、小さな星がぽつぽつと瞬いていた。

配信を始めた当初は、こうして自分達のグッズまで作って販売することになるなんて、考えてもいなかった。

こうして人気が出てきていることが、嬉しくもあり、同時に――ちょっぴり怖くもあった。

有名になるほど、取り返しがつかなくなっていく気がして。

そこまで考えてハッとする。

ダメダメ!マイナス思考になっちゃ!

そんなことを悶々と考えているうちに、
気づけばもう私の家の前だった。

「凪、送ってくれてありがとう」

「ん」

そう無表情で頷く凪の顔を、思わずじっと見つめてしまう。

その理由は――たぶん。

『――そうだな。“ナギ”は人気あるからな』

さっきの凪の言葉が、
やっぱり心のどこかに引っかかってしまっているからだ。

「なんだよ」

「え?」

「さっきから人の顔ジロジロみて。言いたいことあんなら言えば?」

「えっ!いや、別に!」

図星を突かれて、声が裏返る。

「……っ」

喉まで言葉が出かかった。

“ナギ”でいること、苦しくない?
そう聞きたかった。

けど、結局。

「えっと……おやすみ」

そんな当たり障りないことしか言えなかった。

凪が眉を寄せる。

「本当に何もねーの?」

「……うん。気をつけて帰ってね」

「……ああ。……おやすみ、楓花」

そう言って、軽く目を細めて私を見た後、
背を向けて歩いていく凪。

私は、その背中が見えなくなるまで視線が逸らせなかった。

やっぱり、凪は優しい。
口も態度も悪いけど、ちゃんと行動が温かい。
だからこそ――ナギだけじゃなく、“本当の凪”もみんなに知って欲しいと思ってしまった。
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