エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
7
見えなかった悪意
ターミナル駅の大きなロッカーにスーツケースを預けて、千穂との待ち合わせ場所に向かう。住所だけ伝えられたが、スマホのマップアプリで検索してもビル名しかヒットしなかった。
高層マンションが立ち並ぶ交差点を通り過ぎ、目的の雑居ビルにたどり着いた。黒い重厚な扉はあるが、看板はかかっていない。
ここで合ってるのかな。不安に思いながら扉を押した。店内はバーのようで、カウンターにはバーテンダーがひとり。カウンター席に千穂が座っていたからホッとした。知られざる名店というやつなのか、客は千穂だけだった。
「ありがとう、来てくれて。お酒とおつまみはもう頼んであるから」
テーブルにはシーザーサラダとチーズの盛り合わせ、私の席の前にはミントとライムが浮かんだカクテル――たぶんモヒートが置かれていた。
奢ると言われたけどさすがに断って乾杯する。ひと口飲んだモヒートは少し苦かった。今日は疲れているからアルコール成分を感じやすいのかもしれない。あまり飲まないようにしようかな。
「この間はごめん。私、春樹に振られてからヤケになってて、幸せそうな仁奈に嫉妬したの……それであんなひどいことを言っちゃって」
千穂はテーブルに視線を落とした。そんな千穂を見て、後悔が押し寄せる。
「私もごめん。自分のことばっかりで、千穂の気持ちとか考えられてなかった」
千穂がつらい時に寄り添えなかった。お父さんの病気もあって余裕がなくて、千穂の話を聞くタイミングを逃してしまっていた。
「あとね、滉太郎さんとはやっぱり偽装結婚のままお別れすることにした」
「えっ、えっ? そうなの?」
高層マンションが立ち並ぶ交差点を通り過ぎ、目的の雑居ビルにたどり着いた。黒い重厚な扉はあるが、看板はかかっていない。
ここで合ってるのかな。不安に思いながら扉を押した。店内はバーのようで、カウンターにはバーテンダーがひとり。カウンター席に千穂が座っていたからホッとした。知られざる名店というやつなのか、客は千穂だけだった。
「ありがとう、来てくれて。お酒とおつまみはもう頼んであるから」
テーブルにはシーザーサラダとチーズの盛り合わせ、私の席の前にはミントとライムが浮かんだカクテル――たぶんモヒートが置かれていた。
奢ると言われたけどさすがに断って乾杯する。ひと口飲んだモヒートは少し苦かった。今日は疲れているからアルコール成分を感じやすいのかもしれない。あまり飲まないようにしようかな。
「この間はごめん。私、春樹に振られてからヤケになってて、幸せそうな仁奈に嫉妬したの……それであんなひどいことを言っちゃって」
千穂はテーブルに視線を落とした。そんな千穂を見て、後悔が押し寄せる。
「私もごめん。自分のことばっかりで、千穂の気持ちとか考えられてなかった」
千穂がつらい時に寄り添えなかった。お父さんの病気もあって余裕がなくて、千穂の話を聞くタイミングを逃してしまっていた。
「あとね、滉太郎さんとはやっぱり偽装結婚のままお別れすることにした」
「えっ、えっ? そうなの?」