エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
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まさかのひとり旅

 私が黒崎さんに初めて出会ったのは、半年前の八月。

 夏休みを利用して行ったイギリス旅行で偶然出会ったのだ。

 運命的――なんていうほどロマンチックな出会いではなかったし、そもそも私と黒崎さんの間でロマンスは発生していないはずだった。

 ***

 今日からお盆休み。

 空港は大きなスーツケースを携えた人で混雑していて、航空会社のチェックインカウンターも大行列だ。

 私も例に漏れず自分の腰くらいまである大きなスーツケースと一緒に、その行列に並んでいた。外から伝わる強烈な暑さと人混みの熱気が混ざりあって、室内なのに汗がどんどん出てくる。

 早くこの蒸し暑い日本を脱出したい。イギリスは北海道より北だし、ロンドンも涼しいんだろうな。

 今から行く異国の地に思いを馳せるとワクワクしてきた。

 二十七歳にして、初めての海外旅行。

 私が大学在学中にお父さんが会社をリストラされてから経済的に余裕がなくて、旅行どころじゃなかったのだ。

 お父さんはすぐに警備会社の契約社員に再就職したものの、お給料はガクッと下がった。当時中学生で食べ盛りの弟がいる我が家には死活問題。お母さんは私が小学生の頃に亡くなっていたから、家計はどうしてもお父さん頼みだった。

 奨学金を借りて大学を卒業し、手堅く地元の区役所に就職してからは生活が安定したけれど、あの当時はつらかった。弟と働いているお父さんのご飯を優先したいから、私は朝食と昼食をこっそり抜いていて一日一食状態。お腹が背中にくっつきそうになるくらいの空腹にいつも見舞われていた。

 それでも貯金を細々と続けていて、やっと目標額に到達した。この旅行は今まで頑張った自分へのご褒美みたいなものだ。遠足前の子供みたいに、昨日は興奮して眠れなかった。
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