最後まで読まないで
双眼鏡
家族でプロ野球の試合を観に来た。遠くの選手を見るために、父から借りた双眼鏡を覗き込む。「すごい、ベンチの選手の顔までよく見えるぞ」僕は面白くなって、反対側の外野席に双眼鏡を向けてみた。大勢の観客が熱中してグラウンドを見つめている。しかし、一番後ろの席に座る黒ずくめの男だけは違った。男はグラウンドではなく、双眼鏡越しに僕の目を真っ直ぐに見つめ、ゆっくりと手を振っていた。