愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた

同じ記憶を持つ人

 食事のあと、自室に戻ったエリシアのもとを、ヴィクトルが訪ねてきた。
 侍女のダナはすでに下がっているため、エリシアは使用人を呼ぶためのベルをしっかりと握りしめて応対することにした。
「ごめん、夜遅くに。ちょっと話がしたいんだけど、いいかな」
「……少しだけなら」
 緊張のためか喉がからからになっているのを感じながら、エリシアは弟を部屋の中へ迎え入れる。何かあったときのために、部屋のドアは開けておくことにした。ヴィクトルはそれに対して、何も言わない。
 ソファでエリシアと向かい合って座ったヴィクトルは、躊躇うように視線をさまよわせ、やがて何かを決意したように咳払いをすると姿勢を正した。
「あのさ、ものすごく変なことを言っている自覚はあるんだけど……。姉さんは未来の記憶を持ったまま時間が巻き戻る……なんて現象を、信じる?」
「え……」
 ヴィクトルの言葉に、エリシアは目を見開いた。それはまさに、エリシアの身に起こったことだ。あの恐ろしい記憶が再び頭の中によみがえり、手が勝手に震える。
 それを見た彼は、確信を持ったように身を乗り出した。
「やっぱり姉さんも、『戻ってる』んだね?」
「……っ」
 思わずびくりと肩を跳ねさせてしまい、恐怖から逃げるように身体を縮める。ヴィクトルは、そんなエリシアをじっと見つめた。
「おれも、そうなんだ。庭の四阿で……姉さんとロジェリオさんが倒れていたのを見た」
 その言葉に、忌まわしい記憶がよみがえる。耳の奥で、激しい雨音が響いているような気がした。エリシアは懸命に声を絞り出す。
「ヴィクトルも……あの場に、いたの……?」
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