終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
第2話 婚約者のフリに、逃げ道はない
高層階の一室。
足を踏み入れた瞬間、視界がひらける。
ダークトーンで統一されたインテリアなのに、冷たくはない。
間接照明の柔らかい灯りが、空間にわずかな温度を落としている。
ホテルみたいだ、と思った。
けれど、どこか違う。
——“誰かの生活”じゃなくて、
“誰かの領域”みたいな空気だ。
「…………ここ、誰の家よ」
「俺ん家行くぞって言っただろ?」
寝ぼけてんのか?と悪態を付きながら、スーツを脱いでる王子。
あたしはまだ、状況把握ができないまま、リビングのドアに突っ立っている。
「悪い、ちょっと電話するぞ」
「……うん」
一面のガラス張りの向こうに、夜の街が輝いている。
(なんでここにいるんだっけ?……)
たしか。
BARビーナスベルトにいて、
王子と飲んでて、
終電を逃したから。
『俺ん家来い、説明するから』
(そうよ、それでタクシーに乗せられて……)
すると、電話中の王子がやってきて、肩を抱き寄せる。
「親父、例のアレ、婚約者連れてくから」
「それ!――婚約者っ!」
電話の向こうから聞こえる男性の笑い声に、はっと気づく。
(……しまった!)
「な?俺はこいつ――志穂だけだから、じゃあな」
(ちょっと待って、もう決まってるの?!)
慌てて口を押さえたがもう遅い。
王子は笑ったまま、あっさり切った。
「ごめんっ……声出ちゃった」
「くははっ……ほんとサイコーだな志穂はっ」
急に抱きしめてくるから、逃げ場がない。
細身なのに、しっかりとある筋肉。
スパイシーなウッド系の香り。
(……近い)
(こんな距離で、その匂いずるい)
「どうした……志穂?」
怪訝な瞳で覗き込まれる。
その距離に心臓がうるさくて、あたしは王子をおしやる。
「ちゃんと説明してっ……意味わかんないからっ」
「わかった」
足を踏み入れた瞬間、視界がひらける。
ダークトーンで統一されたインテリアなのに、冷たくはない。
間接照明の柔らかい灯りが、空間にわずかな温度を落としている。
ホテルみたいだ、と思った。
けれど、どこか違う。
——“誰かの生活”じゃなくて、
“誰かの領域”みたいな空気だ。
「…………ここ、誰の家よ」
「俺ん家行くぞって言っただろ?」
寝ぼけてんのか?と悪態を付きながら、スーツを脱いでる王子。
あたしはまだ、状況把握ができないまま、リビングのドアに突っ立っている。
「悪い、ちょっと電話するぞ」
「……うん」
一面のガラス張りの向こうに、夜の街が輝いている。
(なんでここにいるんだっけ?……)
たしか。
BARビーナスベルトにいて、
王子と飲んでて、
終電を逃したから。
『俺ん家来い、説明するから』
(そうよ、それでタクシーに乗せられて……)
すると、電話中の王子がやってきて、肩を抱き寄せる。
「親父、例のアレ、婚約者連れてくから」
「それ!――婚約者っ!」
電話の向こうから聞こえる男性の笑い声に、はっと気づく。
(……しまった!)
「な?俺はこいつ――志穂だけだから、じゃあな」
(ちょっと待って、もう決まってるの?!)
慌てて口を押さえたがもう遅い。
王子は笑ったまま、あっさり切った。
「ごめんっ……声出ちゃった」
「くははっ……ほんとサイコーだな志穂はっ」
急に抱きしめてくるから、逃げ場がない。
細身なのに、しっかりとある筋肉。
スパイシーなウッド系の香り。
(……近い)
(こんな距離で、その匂いずるい)
「どうした……志穂?」
怪訝な瞳で覗き込まれる。
その距離に心臓がうるさくて、あたしは王子をおしやる。
「ちゃんと説明してっ……意味わかんないからっ」
「わかった」