王女エメリーネに悪女は似合わない~軍人公爵の盲愛に囚われて
11.
「失礼いたします。ベルジュ公爵が、エメリーネ王女にお目通りを願いたいと先触れを出してまいりましたが、いかがいたしましょうか」
 現れたのは城の文官で、言づてを伝えるのが彼の務めだ。青白い顔に緊張をにじませる彼のオーラは紫。となればアルマスの手は伸びていないと考えていい。
 だがオディロンがエメリーネに会いたいなど、いったい何があったのだろうか。それでも、断る理由はない。
「わかりました。お待ちしておりますと、伝えてくださる?」
 エメリーネの穏やかな声を聞いた文官は、ほっとしたように一礼して去っていく。
「ベルジュ公爵……いったい、どうしたのかしら?」
 その呟きを拾ったシーラが、くすっと笑って答える。
「エメリーネ様はパーティーで怪我をされましたよね? それのお見舞いではないでしょうか?」
「あぁ、これね? わたくしはいつまで杖をついて歩いたらいいと思う?」
 包帯が巻かれた足をぶらぶらと振って、エメリーネはシーラに尋ねた。
「私ではわかりかねます。侍医の判断によるのではないでしょうか? 安静にとのことですので、安静にしていれば早く治ると思うのですが……」
「そうよねぇ? わたくしは安静にしていたかったの。安静ついでにお礼状を書こうと思ったのに、わざわざ宝物庫に出向く羽目になるとは……それよりも」
 エメリーネはふと声を潜め、シーラの顔をじっと見つめた。先ほどのシーラの言葉が気になっていた。
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