マッチングした相手は片想いの社長でした

第27話 父への挨拶

左手の薬指が、いつもより少しだけ重い。

ほんの小さな指輪なのに、そこに春樹さんとの未来が全部詰まっているような気がして、私は朝から何度も自分の左手を見ていた。

会社に着いてからも同じだった。

パソコンを立ち上げながら、ちらり。

資料を取ろうとして、ちらり。

そのたびに胸の奥がくすぐったくなる。

――私、春樹さんと結婚するんだ。

温泉でプロポーズされた時のことを思い出すだけで、今でも夢なんじゃないかと思ってしまう。

ずっと片想いしていた人。

遠くから見ているだけでよかった人。

社長と一般社員。

住む世界が違うんだって、自分に何度も言い聞かせてきた。

それなのに今、私の薬指には春樹さんからもらった指輪がある。

「おはよう、那奈」

聞き慣れた声に顔を上げる。
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