雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

5-2

 リリアナが入宮して一週間が経ったこの日、エノレアはレニオスの執務室で会議資料の説明をしていた。

 資料のページを捲ったタイミングで突然ドアが開き、エノレアはびっくりする。入り口を見ると、ティーセットの載ったトレーを持って優雅に微笑むリリアナがいた。

「殿下。お茶をご用意しました」
「茶は必要なときに言うから不要だと言っただろう」
「でも、殿下はなかなか休憩なさいませんから」
「不要だ」

 にこやかなリリアナに対して、レニオスはびっくりするほど塩対応だ。
 見ていていたたまれなくなったのか、オリバーが「さすがはリリアナ様ですね。ちょうど喉が渇いたところでした」とフォローを入れる。

「まあ、やっぱり! きっとそうだと思ったんです」

 リリアナは朗らかに微笑むと。テーブルにティーカップをおいてお茶を注ぐ。

「殿下、本日の紅茶はわたくしが淹れたんですよ」
「そうか」
「お口に合えばよいのですが」
「茶葉が同じなら誰が淹れても同じだろう」
「全然違います。これからわたくしがお教えいたしますね」

 レニオスの素っ気ない態度にめげることなく、リリアナは平常運転だ。

(凄い! これが鋼のメンタルってやつね。お父さんが昔言ってたわ!)
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