青羽 真さんの作品一覧

燠火(おきび)

総文字数/103,691

その他14ページ

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父は三人を殺した。被害者の娘と、湊はいま同じ屋根の下にいる。  湊は、彼女が誰なのかを最初から知っていた。彼女は、彼が誰なのかを知らなかった。  東京の小さなパン屋で出会った二十歳の戸倉更紗は、湊の父が殺した男の、娘だった。  二〇〇三年十二月十四日。群馬県柏尾市の鉄工所が燃えた。  旋盤工の父・安西邦夫は、社長を殴り殺し、工場に火を放った。火は隣接する社長宅に燃え移り、社長の妻と、七歳の次女が焼け死んだ。死者三名。判決は無期懲役。  残されたのは、母と、十五歳の兄と、八歳の妹だった。  一家は町を捨て、母の旧姓を名乗り、「三堀」という名前で生き直すことになる。──兄だけが、のちにその名を返した。  二十二年後。兄・湊は、千葉の海辺の小さな町でパン屋をひとりでやっている。人を雇わない。写真を持たない。誰にも本当の名字を字で見せない。それでも毎朝二時四十分に起き、窯の灰をかき分けて、その下でまだ赤いものに薪をくべる。  あの日、たまたま祖母の家に泊まっていて生き残ったのが、更紗だった。  そしてもうひとつ。父は服役してから二十年、息子の面会も手紙も、ただの一度も受け取らなかった。  その理由が明かされるのは、父が死んだあとのことである。  加害者家族は、何をどこまで償えばいいのか。  償い終わることのない罪と、人はどう生きていけばいいのか。  赦しの物語ではありません。それでも朝は来る、という物語です。  全十四話・約九万五千字。十月七日より毎日二十一時に一話ずつ更新、十月二十日完結予定。
御神渡り(おみわたり)

総文字数/89,467

ミステリー・サスペンス19ページ

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善い人だった父が殺された。犯人はすぐ自首した。それが嘘の始まりだ。 「私が突き落としました。三十四年前に私が殺した女の子のことを、あの人に知られたからです」 事件は、四日で解決したはずだった。 長野県諏訪市。氷点下の朝、神社の五十段の石段の下で、元高校教師・遠山克巳の遺体が見つかる。教え子を三十四年にわたって支え続け、地域の誰もが「善い人」と呼んだ男である。冷たくなったその右手には、誰のものともしれない黒いボタンが握られていた。 四日後、廃業した町工場の元社長・牧野常雄が、自ら警察署に出頭する。 だが、疎遠だった娘・千尋と、加害者の息子である中学教師・牧野悠が、それぞれの父の三十四年を掘り返しはじめたとき、供述と噛み合わない事実が一つずつ現れてくる。毎月三万円の送金。事故の六年後に取り付けられたはずの鉄の階段。雪の上に残された、人が一時間座っていた窪み。 諏訪湖の氷は、ゆるんで締まるのを繰り返し、いつか自分の重みで割れる。割れ目は湖を横切る一本の道になり、氷の下にあったものを、湖はそのとき初めて自分で吐き出す。
約束の庭

総文字数/40,834

ミステリー・サスペンス19ページ

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【柚木刑事シリーズ 第三作・完結編】各作品は独立した事件です。本作からお読みいただけます。  児童養護施設「若葉園」の園長・桐生誠一が、庭の石段の下で死んでいた。  七十八歳。五十年にわたって園を守り続けた人物だった。  現場に立った県警の柚木は、ひとつの違和感を覚える。転落死にしては、血が少なすぎる。  園長室からは、公式の帳簿とは別に、五十年分の手書きの記録が見つかった。  そこに書かれていたのは、卒園していった子どもたちへ、園長が私費で渡し続けた金の記録だった。  庭には桜が植えられている。一本ごとに、ひとりの子どもの名前がある。  その庭で、園長は誰と、何を約束したのか。  老刑事と若い相棒が、五十年分の記録をたどっていく。  ※作中に、児童虐待および自死を想起させる描写が含まれます。  ※本作は、城見町を舞台にした三部作の完結編にあたります。県警捜査一課の柚木数馬と、若い相棒の三雲拓海。同じ町で向き合った、独立した三つの事件です。 第一作『八月の蛍』(完結)  二十年、母は提灯を灯し続けた。帰らない息子の、目印として。 第二作『忘れ雪』(完結)  積もらずに消える雪を、忘れ雪という。
忘れ雪

総文字数/52,918

ミステリー・サスペンス16ページ

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積もらずに消える雪を、忘れ雪という。 【柚木刑事シリーズ 第二作】各作品は独立した事件です。本作からお読みいただけます。 初雪の夜、城見署に八十歳の女が現れた。矢代キヨ。認知症が始まったばかりの彼女は、六十年前に男を一人殺したと告げる。だが記録を洗っても、その年に事件は存在しない。 「全部、話しなさい。……私が覚えておきます」 定年を七か月後に控えた刑事・柚木は、調べるのではなく聞き書きを始める。やがて工場の跡地から白骨が出た。昭和四十五年、南陽紡績の女工寮。前借金に縛られた娘たち。そして、五十五年間ただの一度も欠けなかった、差出人のない年賀状。 描かれているのは花の絵が一枚と、同じ言葉だけ。ゆびきった、げんまん。百回、万回。 二人の少女が交わした約束と、六十年の沈黙の物語。 ※本作は、城見町を舞台にした三部作の第二作です。県警捜査一課の柚木数馬と、新人刑事の三雲拓海。同じ町で向き合った、独立した三つの事件ですので、本作からお読みいただいても差し支えありません。 第一作『八月の蛍』(完結)  二十年、母は提灯を灯し続けた。帰らない息子の、目印として。あの夏の事件です。 第三作『約束の庭』(9月25日公開)  その庭の桜は、卒園していった子どもたちの数だけ植えられていた。柚木の、最後の事件です。 ※柚木数馬は、Kindleで刊行中の『柚木刑事シリーズ』(全三巻)と同じ刑事です。 ※昭和期の人身売買・性暴力を題材に含みます。
八月の蛍

総文字数/65,564

ミステリー・サスペンス17ページ

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 川で、身元のわからない男の遺体が見つかった。両手には、古い火傷の痕があった。  県警捜査一課の柚木と、新人刑事の三雲が辿り着いたのは、二十年前に城見町で起きた倉庫火災である。放火犯とされたのは、当時十六歳の少年。少年は町を捨て、以来消息を絶っていた。  町の南の外れに、老いた母が一人で暮らしている。「火付けの母」と呼ばれながら、二十年、盆のたびに軒先の提灯を灯し続けた女だった。―帰ってくる息子の、目印として。  誰も掘り返したがらない二十年を、二人の刑事が拾って歩く。  地方の町の、記憶と赦しの物語。  ※【柚木刑事シリーズ 第一作】本作は、城見町を舞台にした三部作の第一作です。県警捜査一課の柚木数馬と、新人刑事の三雲拓海。各作品は独立した事件ですので、どこからお読みいただいてもかまいません。 第二作『忘れ雪』(9月24日公開)  積もらずに消える雪を、忘れ雪という。八十歳の女が、六十年前の殺人を告白しに来る冬の話です。 第三作『約束の庭』(9月25日公開)  その庭の桜は、卒園していった子どもたちの数だけ植えられていた。柚木の、最後の事件です。  ※柚木数馬は、Kindleで刊行中の『柚木刑事シリーズ』(全三巻)と同じ、県警捜査一課の刑事です。
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―――――――――― 【シリーズ第2作・続編】 本作は『たそがれ色のカフェオレ』の続編です。 読む順番:①たそがれ色のカフェオレ → ②よあけ色のカフェオレ 前作はこちら → https://www.berrys-cafe.jp/book/n1792140 ―――――――――― 恋が叶ったあとの、四年目。手をつないだのは、三年で七回。  小暮修一郎、五十歳。二十六も年上の、あの人。  杉原陽菜多、二十四歳。信州松本の出版社に勤めて、二年目。土曜日の始発のバスに乗って、四十分かけて高原の民宿へ通う。コーヒーを飲んで、卵を割って、猫にリュックを取られて、日曜の夜に帰ってくる。笑ってしまうくらい、幸せな日々。  ——けれど二人は、いまだに一度も「恋人」という言葉を使ったことがない。手をつないだのは、三年で七回。陽菜多はその回数を、こっそり数えている。  やがて父が山を訪ねてきて、正確すぎる計算を突きつけた。 「あなたが七十のとき、娘は四十四です」  そして夏の朝、厨房で、あの人が倒れた。病院の廊下で「ご家族の方は」と聞かれ、陽菜多は「いえ、違います」と答えるしかなかった。  前作で逃げたのは、あの人でした。  今度、逃げたのは——私でした。  年の差の恋が、いちばん苦しくなる四年目の物語。もちろん、最後は幸せに終わります。  全十話・完結済(約三万三千字/一時間ほどで読めます)。  本作だけでもお読みいただけますが、前作『たそがれ色のカフェオレ』(約三十分)から続けて読むと、「七回」の意味が変わります → https://www.berrys-cafe.jp/book/n1792140 ※カクヨムにも掲載しています。
たそがれ色のカフェオレ

総文字数/16,270

恋愛(純愛)9ページ

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―――――――――― 【シリーズ第1作】 読む順番:①たそがれ色のカフェオレ(本作) → ②よあけ色のカフェオレ(続編) ―――――――――― 二十歳の私と、四十六歳のあなた。恋の距離は、二十六年。  雨宿りで飛び込んだ路地裏に、〈珈琲 シリウス〉という古い喫茶店があった。  差し出されたタオルは、お日さまの匂いがした。ゆっくり温めた牛乳のカフェオレは、砂糖を入れていないのに甘かった。財布に三百二十円しかなかった私に、マスターは笑ってこう言った。 「残りは、今度晴れた日に顔を見せてくれたらチャラ」  小暮修一郎、四十六歳。八年前に奥さんを亡くして、ひとりで店を続けている人。声が低くて、手が大きくて、怒った顔を一度も見たことがない。  杉原陽菜多、二十歳。K女子大の文学部二年生。恋愛経験、ほぼゼロ。  父と五つしか違わない。誰がどう考えても、無謀な恋だった。  やがて商店街に再開発の話が持ち上がり、店は閉店へと追い込まれていく。さらに、亡くなった奥さんによく似た女性が、店にあらわれて——。  私のライバルは、歳を取らない思い出。  それでも、なかったことにだけは、したくなかった。  遅すぎて早すぎる、二十六歳差の初恋の物語です。ハッピーエンドですので、どうぞ安心して最後までお付き合いください。  全九話・完結済(約一万六千字/三十分ほどで読めます)。 ★続編『よあけ色のカフェオレ』(陽菜多二十四歳、四年後の話)も完結済みで公開中です。二人のその後はこちらから → https://www.berrys-cafe.jp/book/n1792143 ※カクヨムにも掲載しています。
あかつき荘の灯

総文字数/106,691

恋愛(純愛)38ページ

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十一年前、あなたの物語に救われた。名乗れないまま、そばにいる。  彼は十一年、たった一人の女の子を探している。  その子はいま、彼の会社で電話を取っている。名乗らないまま。  雨宮千景。十一年前、たった一本の深夜アニメでこの国の夜を塗り替え、そして、それきり自分の物語を書けなくなった男。煙草と、コーヒーと、誰にも見せない原稿。  朝倉灯。新しく入居した制作進行。十一年前、その最終回を観て家を出て、氷点下の国道を一晩じゅう歩いた中学二年生——世間が「壊された」と呼んだ、あの子。  名乗れない。名乗った瞬間、自分は「謝られる側」になるから。  三鷹の坂の上に、あかつき荘という古い寮がある。色彩設計、作画監督、脚本家志望、声優志望。何者かになりたい人たちが、ひとつ屋根の下で暮らしている。  誰も見ていない仕事を、それでも続ける日々。そこに落ちる一枚の盗作。割れていく家。そして、消える灯。  ——夜が明けるまで歩けば、朝は勝手に来る。   来ない朝を待つのは、しんどいけどさ。  十一年越しの片想いが、静かに報われるまでの物語です。泣ける話ですが、ちゃんと幸せに終わります。  全三十八話・完結済(約十万七千字)。一話は五分ほどで読めますので、通勤や寝る前に少しずつどうぞ。 ※カクヨムにも掲載しています。
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