社長の推しは、地味メガネのわたしでした。

狂気の正体

「絶対にいや、絶対に……」

 膝を抱え泣いていた美春が、涙に濡れた顔をあげ隣に座る律季を睨む。

「なによ、なによ、なによ!! 律季、あんただけ良い顔しようたって許さないんだから! 誰のおかげで、お姉ちゃんの側にいられると思ってんのよ! 共犯者のくせに……」

 律季が共犯者? いったいどう言うことなの?

 美春の言葉に、視線を律季に移せば、彼はフイッと視線を逸らす。バツが悪そうに歪められた律季の顔を見て、私の頭の中を疑問符が駆け巡る。

「律季……、共犯者って、どういうこと?」

「そのままの意味よ! 律季は私の共犯者。唯一、お姉ちゃんの側に居ることを私に許された男」

 私の側に居ることを許された男?

 美春はいったい何を言っているの? それじゃまるで、私の交友関係すべて、美春に握られていたとでも言っているみたいじゃない。

 脳裏をよぎった過去が背をふるわす。

 まさか、そんなことって……

「美春、いったいどう言うことなの!?」

「簡単な話よ。お姉ちゃんに群がる悪い虫を排除して来ただけの話」

「じゃあ……、私の前から姿を消した友達、恋人、みんな美春が――」

「そう、私がちょっと声をかけただけで、お姉ちゃんより私を選ぶような人、いらないでしょ。ううん、そもそもお姉ちゃんには私が居れば十分じゃない。たった二人だけの姉妹なのよ……、だから排除したの」

 そう言ってクスクス笑う美春は、先ほどまで泣いていた妹と同一人物とは思えない。

 彼女の狂気が顔を見せる。

 すべての交友関係を断たれた過去。友に、恋人に……、全てを美春に奪われた。

 私から交友関係を奪う事は、私に劣等感を植え付け、優越感を得るための手段だとずっと思っていた。

 その考え自体が間違っていたのだとしたら。

 頭の中で響く警告音が、回答を聞くなと訴える。しかし、言葉はついて出ていた。
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