社長の推しは、地味メガネのわたしでした。

歪な三角【颯真side】

「伊勢谷君……、君は三人の関係の異様さに気づいているのではないのか?」

 ビクッと震えた肩に、確信を得る。

 伊勢谷律季は分かっているのだ。三人の関係の歪さに。

「これからする話は、俺の憶測にすぎない。ただ、他者から見た君たち三人の関係……、いいや、正しくは穂花をめぐる美春さんと伊勢谷君の関係だな。それは、とても歪に見える。特に、美春さんの穂花に対する思い入れは、尋常ではない。幼少期に両親を亡くしたとはいえ、成人してからも穂花を側に置きたがるのは異常だ。普通では、考えられない」

「そう思うのは、貴方が本当の意味で穂花と美春の関係を知らないからではないですか。世の中には、大人になっても仲の良い姉妹はいる。それが、普通よりちょっと過度なだけとも考えられる」

「確かに、何も知らなければ、そう思うだろう。ただ、美春さんは穂花に関わる人間すべてを排除してきた。学生時代の友人に、恋人、それだけではない。仕事やプライベート……、穂花の私生活すべてを把握し、支配してきたと言っても過言ではない。『花音』という弱味につけ込んで。伊勢谷君――、『花音』の正体は穂花だね」

「……くくく、それを俺に聞くんですね。そうだったら、なんだって言うんですか?」

「穂花を自由にしろ。彼女の人生は、彼女だけのものだ」

「ははは、穂花を自由にしろ? 貴方になにがわかる。何も知らないくせに……」

 肩を震わせ笑っていた伊勢谷律季の狂気が顔を見せる。急に膨れ上がった殺気が背をビリビリと震わせる。

 ここで引いてはダメだと、本能が告げていた。
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