Dearest 2nd 〜Moon〜
第22章 焦りと苛立ち
第22章 焦りと苛立ち
………年が明けて数ヶ月が経った。
その間に、彩は春からの一人暮らしに向けて着々と準備を整えていた。
あと数日もすれば
「今月、アヤヤ卒業式だねーーー!!」
俺のリビングに掛かってあるカレンダーに、壱はわくわく楽しそうにハートマークを付けやがった。
……しかも目立つピンク色で、だ。
「────…ちょっ!!バカかお前は!!!
何勝手にハートなんか書いとんねん!!」
「えーっ⁉いいじゃーん!!分かりやすいでしょぉっ!?」
「やめろアホ!!」
壱を追いかけドタバタと走りながら思うのは、彩の卒業式の事。
先に長くてヒマな春休みに突入した俺達は、連日彩の一人暮らしへの準備の、いわばアシスタント係になっていた。
物件から始まり、家具、家電、食器類、小物類。
彩が“買い物に行く”とでも言えば、全員がキッチリバイトの休みを合わせるアシストぶり。
……どんだけヒマやねん、と思うけど。
何でもない事で笑い合う、何でもないこんな日々が楽しい。
「……彩ちゃんがいよいよ卒業か……。
何か早いな。時の流れってのはさ。」
────…コポコポ…。
吾郎は全員分のコーヒーを淹れながら、穏やかに笑った。
「……せやなぁ。
出会った頃は高校生成り立てやったのにな。
それがもう卒業やもんなー……。」
部屋にコーヒーのいい香りが漂ってきて、俺はそう返事をしながらテーブルに戻った。
「……彩が高校卒業と共に、純もやっとロリコン卒業だねー。」
マリアは吾郎からコーヒーを受け取り、嫌味混じりに笑っている。
「だーーーかーーーらーーー!!!
俺は断じてロリコンじゃない!!!!!」
マリアをキッと睨み付け、言われもしないロリコン疑惑を全面的に否定した。
「卒業式かー!!オレも行きたいなぁ〜!!!!
アヤヤが卒業するとこ見て感動したいぃぃーーー!!!」
壱はコーヒーに大量のミルクを入れながら、次の瞬間ハッと閃いたように
「────あっ!!!!そっかぁ!!!
じゃあ行ったらいいんだね!卒業式にさ!」
……………はい?
「うんうん!!そーだねそうだよ!
我ながらナイスアイディアじゃないっっっ??
卒業式っつったらやっぱスーツとか着ていった方がいいのかなー!」
壱は俺の訝しげな表情を見てもいなく、ウキウキしながら妄想を披露し始めた。
ついでにマリアまで
「……あたし、その日バイト休みだったかな……」
と真面目にケータイのスケジュールを見始める。
「おっ、おいおいマリア?」
え、マジ?本気??
焦る俺を置いて吾郎までもが
「あ、俺休みだわ。いけそう。」
………と、ニッコリ笑って手帳に書き込みだした。
…え?え?嘘やろ吾郎まで??
「やったぁゴローちゃん!!じゃあアヤヤの卒業式行けるね!」
「だな♪」
「でもスーツかぁ……あたしそーいうの苦手だわ〜…」
「お前の正装サムライ姿でいいんじゃね?
チョンマゲに刀持ってさ〜!!!
超〜シブくてお似合いだぞ!大魔王!!!」
「……あ?殴り殺すぞこのクソ猿が」
「・・・う〜んとね……。
ちょっと待とうか君達……。」
「「「…へ???」」」
三人が珍しく輪になり意気投合している風景を見て、俺は思わず頭を抱えた。