婚約者のフリをしてください、専務~冷徹御曹司の溺愛は嘘から始まる~
8.箍が外れて
ベッドに横になると、綾斗さんの香りがしてまた胸の奥がキュウとする。落ち着く香り。でも今は私の心拍数をあげるだけだ。
私の上を跨ぐようにのしかかった綾斗さんは、体を起こしてスーツの上着を脱ぎ棄てた。そして私から目線を外さないまま、ネクタイをクイッと緩める。
「っ……!」
思わず顔を両手で覆うと、綾斗さんが私の手首を掴んで優しくベッドに押し付けた。
「あ……」
「どうして顔を隠す?」
「あの……、えっと……」
目線を泳がせる私を綾斗さんは逃さなかった。
体をかがめて、私の鎖骨に唇を寄せる。わざとらしくチュッと音を鳴らすのが、恥ずかしくて「んっ」と声を漏らす。
「言って」
「そ、その……」
言えと言いながら、首筋や胸元にキスをするので自然と息が上がって言葉が出ない。
「どうした?」
「はぁ……、あの……、ネクタイが……ん……」
「ネクタイ?」
上から私を不思議そうに見つめる綾斗さんに私は息を乱しながら答える。
「ネクタイを外す姿が……、あまりにも格好良くて……」
一瞬だけ目を丸くした綾斗さんがふっと微笑む。
「ときめいた?」
ときめいたどころではない。破壊力満点だ。答えない私に綾斗さんは甘い声で囁いた。
「俺はずっと茉白にときめいている」
「あっ……」
低く甘い声が何度も私の耳をくすぐる。その度に体中がトロトロに溶けていきそうな感覚に陥るのだ。
綾斗さんが与えてくる刺激の全てが私の意識を何度も飛ばそうとしてくる。声を抑えようとしても漏れ出てしまうのが恥ずかしくて唇を噛むと、濃厚なキスでその力を奪い去っていく。
「声を聞かせろ」
「は、恥ずかしい……です……、んっ……」
「すべて見ているのに? 今更だろう」
ククッと笑いながら、私の胸に顔を寄せるからまた嬌声が漏れた。
そんな綾斗さんこそ、だんだんと余裕をなくし息が乱れてきている。それが凄く愛おしく感じて私から綾斗さんの首に腕を回した。
ピッタリと肌がくっつき、より深く交わる。
ひとつになるってこういうことか、そう実感するほど心も体も私たちは繋がった気がした。
「茉白、悪い……」
綾斗さんは熱い息を吐きながら低く呟いた。
「今日はずっと……、朝まで放せないかもしれない……」
それはもう宣言だった。顔は微笑んでいるのに、欲情した瞳は獲物を見つけた野獣のように雄雄しくてお腹の奥がキュッとうずくのを感じた。
「放さないで……。綾斗さんとずっとこうしていたいから……」
飛びつつある意識の合間にそう答える。綾斗さんは優しく微笑んだ後、宣言通り朝まで私を隅々まで愛でて堪能したのである。