拝啓、愛しのパイロット様
8.ファイナルアプローチ
(そろそろ出かけなきゃ)
身支度を整え終わった小町は鏡の前で、今一度自分自身と向き合った。
由桔也と仲違いしたまま時は流れ、とうとう実登里の個展の初日だ。
トートバッグの中には、由桔也宛の手紙が入っている。
酷いことを言ってしまった謝罪と、自分の本当の気持ちを納得がいくまで書き直したので、最後まで仕上げるのに何日もかかった。
(受け取ってもらえなかったらどうしよう……)
一瞬頭をよぎった嫌な想像を振り払うように、ふるふると首を横に振る。
(受け取ってもらえるまで書けばいいじゃない)
そうやって己を奮い立たせていると、ふと思い出した。
もしかしたら、由桔也も初めて手紙を書いたときは同じ気持ちだったのかもしれない。
結局小町は不安を抱えたまま、マンションをあとにした。
実登里の個展が開催されるギャラリーまでは電車で三十分ほどの距離だ。
電車を降りてからは徒歩で移動する。
繁華街から少し外れた路地裏にある二階建てのギャラリーの前には『宇佐美実登里、書道展』という看板が立っていた。