拝啓、愛しのパイロット様
「小町さ~ん!」
「実登里先生!」
ギャラリーの中の様子を窺いながらそっと扉を開くと、薄紅色に菊を浮かべた訪問着姿の実登里がすぐさま駆け寄ってきてくれた。
「個展の開催、おめでとうございます」
小町はお祝いの言葉を述べてから頭を下げた。
「ありがとう、小町さん。色々手伝ってもらった上に、お花までいただいちゃって……」
「喜んでいただけてうれしいです」
小町が贈った心ばかりのフラワーバスケットは、ギャラリーの入口に設けられた受付のテーブルの上に飾られている。
他にも名だたる企業から届けられたフラワースタンドがずらりと並んでいるのに、一番目立つ場所を独占していて、かえって気まずいくらいである。
(わあ!すごい人……)
チラリとフロアの様子を窺ってみると、なかなか盛況のようで、会場には既に小町以外にも大勢の人が実登里の書を楽しんでいた。
「あの……由桔也さんはどちらに?」
小町は控えめに声を抑えて実登里に尋ねた。
たまたま席を外しているのか、この個展の責任者である由桔也の姿がギャラリー内のどこにも見当たらなかったのだ。