拝啓、愛しのパイロット様

 スクールを終えて帰宅するなり、小町は真っ先に書斎に入り、自分のマンションから持ち出した荷物を取り出した。

 ひとつずつ中身を開けていき、最後の最後で目当てのモノを探し当てる。

「あった」

 小町が探していたのは、かつて使っていたイチゴのペンケースだ。

 長い年月が経っていてボロボロなので、今はお守り代わりに大切にしまっている。

 思い出のペンケースは記憶よりも少し色あせており、チャームの部分もメッキが剥がれて黒ずんでいた。

(変わらないものなんてどこにもない)

 あの頃の自分は母親から見向きもされず、ひとりぼっちのような気がしていた。
 それでも、文房具と手紙を通じて誰かと繋がれた。

(諦めたくない)

 由桔也への想いも、自分の夢も全部。
 小町は今度こそ忘れないように、夢の原点であるペンケースを大事に抱えた。

(本当はわかっていたんだ)

 女性に指輪を渡していたのだって、由桔也にもなにか事情があったのだろう。
 でも、誰かを好きになった結果を受け止める自信がまだなくて、彼を責めてしまった。

 事情があるなら知りたいし、もし間違っていたなら謝りたい。

(手紙を書こう)

 小町はレターセットをひと組み取り出し、デスクに向かった。
 照れ臭くて言えないことでも、きっと手紙なら伝えられるはず。
 由桔也が送られてきた手紙が勇気をくれた。

 そうして思いのままに書き綴った手紙は三枚にも及んだ。
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