こじらせCEOの壮大すぎる初恋計画 〜二代目女社長、冷徹なライバルに理不尽な政略結婚を迫られたはずが、すべては22年前からの策略でした!?〜

25.最高に重くて、最高に一途な男

「こ、こ、婚約者?」
 隼人に睨まれた記者は後ずさりをする。
 
「今、彼女に言った言葉はすべて記録させてもらった。弁護士を通じて名誉毀損とストーカー規制法違反で即座に訴える」
「なっ! こっちは正当な取材……っ」
「ネタの提供者は伊集院あたりか?」
 射殺さんばかりの視線で見据えた隼人に怯えた記者は、逃げるように走り去っていく。

 伊集院って、まさかあのお嬢様?
 確かに彼女なら私の顔がわかるから、私の招待がバレていることも、意味不明な「略奪」も辻褄が合う。
 
「どうして」
「説明は後だ。逃げるぞ」
「は? 逃げる?」
 戸惑う間もなく、グイッと引き寄せられた遥は、道路に横付けされたピカピカの黒い車に押し込められた。
 
 運転手はいつもどおり隼人の秘書の田沼だ。
 遥が乗り込むのとほぼ同時に、車はすぐに発進した。

「どういう……」
 言いかけた遥はふと窓の外の異様な光景に驚く。
 記者はさっきの男だけではなかったのだ。
 街灯の影や、停車していたバンの陰から、カメラを構えた数人の男女が慌てて出てくる。

「あっちだ! 今の車に乗ったぞ!」
「車! 早く追いかけろ!」
 フラッシュの白い光が、窓ガラス越しに光る。

「……何、これ……」
 窓を流れていくのは、自分を好奇の目で見つめる知らない顔、顔、顔。
 ガタガタと震え出した遥の指先に、隼人の大きな手が重なった。

「田沼、予定を変更する。このまま本社へ向かえ」
「承知いたしました。各社への通達は?」
「今すぐだ。二時間後に緊急の記者会見を開く。九十九遥との『正式な婚約』と、悪質な捏造報道に対する法的措置の発表だ」
 隼人の言葉に、遥は弾かれたように顔を上げる。
 
「待って。一年だけの契約でしょ? 大々的に発表したらあとで……」
 困るでしょと言おうとした遥の言葉を遮るように、隼人の大きな手が遥の頬を包み込んだ。
 
 隼人の指先が頬を滑り、そのまま耳の輪郭をなぞって耳たぶに触れる。
 抗う隙を与えないまま、指先は首筋へ。
 喉元を這う、熱い指。
 隼人は遥の細い首を、折れ物でも扱うかのような手つきで包み込んだ。

「一生、側にいてくれ」
「そんなの契……」
 言いかけた唇が、熱い吐息に塞がれる。
 深く、執着に満ちたキスに、遥の思考はしばらく停止した。
 
「隼人様、リリーさんが1時間半で支度はできないと怒っております」
「最初は俺だけで会見する。遥は最後だけでいい」
「かしこまりました」
 関係各所に電話している田沼はとっても有能。
 いや、今はそんなことに感心している場合ではない。

「ねぇ、待って」
「なんだ?」
「半年以内に売り上げを倍にできたら、この契約は白紙になるはずでしょ? まだ半年経っていないわ」
「……そうだな。でも無理だ」
 売り上げを倍なんてもともと無理難題だけれど、そんなにハッキリ言わなくたって。
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