エリート救命医と身代わり花嫁の再会愛。
第12話 動き始める
夕暮れの柔らかなオレンジ色の光が、マンションのリビングに優しく差し込んでいた。
私はソファに座り、航大くんの帰りを待ちながら、今朝の会話をもう一度頭の中で辿っていた。
伯父の計画の全貌。融資の罠に、凛太郎くんが掴んでいた証拠。
航大くんが『あとは動くだけだ』と言った時の、いつもとは違う……静かで力強い目。
怖い、という気持ちはまだある。
でも、昨日までとは違う怖さだった。一人で抱えていた時の、出口が見えない恐怖じゃない。戦いが始まる前夜の、緊張に近い感覚だった。
窓の外を眺めながら、父のことを考えた。今頃、元気に診察しているだろうか。最後に声を聞いたのは航大くんと強制的に結婚させられる前攫われた日だ。伯父の監視があるから、気軽に連絡もできない。でも、もうすぐ——航大くんが動いてくれれば、もうすぐ父に普通に電話できる日が来る。
その日を思い浮かべると、胸の奥が静かに温かくなった。