非道な殺し屋頭領は、甘美な毒で花を欺く
参.春に咲く椛
暁のかりそめ妻になった次の日から、椛は暗殺の機会を窺いながら団子屋の仕事を手伝うことになった。
団子屋の客は若い女性が多く、突然現れた「暁の妻」を名乗る椛に、疑いのまなざしが向けられた。
「しばらく病気で実家に帰らせていたが、良くなったから呼び寄せたんだ」
暁がそう説明したが、皆にそれを信じてもらえたわけではなさそうだった。
ふたりで店に立つとヤジがうるさく、暁は結局、椛に売り子を任せて、自分だけ奥に引っ込んだ。
ひとりで店に出ている椛は、暁に好意を寄せている若い女性にガンを飛ばされたり、着物の袖にゴミを入れられたり。暁の見ていないことで微妙な嫌がらせを受けている。
妻のフリをするのは、女避けどころか、暁を好きな女性たちの嫉妬心を煽っただけなのではないだろうか。
裏で団子の仕込みをしている暁は、充分な在庫を作ったあとは座敷でサボっている。
初日から、割を食っているのは椛ばかりだ。
とはいえ、椛だって、ただ従順に団子屋で働いているわけではない。
朝も昼も夜も、常に暁を暗殺する機を狙っている。
だが、うまくいかない。