恋は手のひらの上で
また明日
月曜日、私は無事に仕事に復帰した。


出社してすぐ、関係部署へ挨拶にまわり、先週の早退した経緯と謝罪。
ほぼほぼ全員、「頑張りすぎなんだよ」と言ってくれた。


早めに出社したのに、やっと自分のデスクへ着いた頃には就業時間ぎりぎりだった。

バッグを置いて、ふぅ、とため息をつく。
同時に、ぽんと肩に手を置かれた。

「おはよ」

後ろに、高橋がいた。

「あっ、おはよう」

ちゃんと挨拶を返したのに、肩に置かれた手が離れない。

「体調は?」

不機嫌オーラがすごすぎて、尋問を受けているみたいだった。

「ごめん、もう大丈夫。土日ずっと寝てた」

「何回も連絡したのに?」

「返事したじゃない、“大丈夫”って」

「なんっか、ズレてんだよなぁ」

せっかくセットしたであろう髪の毛を、わしわしとかく。
その仕草に、彼の不満が表れていた。

そしてこの週末にやり取りしたスマホの画面をつきつけられる。

『帰ったらラインして』
『無事に着いた?』
『体調どう?』
『おーい』
『大丈夫?』

これが、私が早退した日。

思わず目を逸らそうとしたら、逃げた先にスマホを向ける。
逃すまいと相手もやっきになっている。

土曜日。

『西野、大丈夫?』
着信、三回。
『まさか死んでないよな?』

その日の夜に、私のポツンとしたひと言。

『大丈夫』


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