恋は手のひらの上で
肩から手が、一切離れる気配がない。

「俺がこんなんで納得すると思ってた?」

「…思ってた」

「そんなわけないだろ?あんな帰り方して」


それは、確かにそうなんだけど。

申し訳ない気持ちはありながらも、土曜日は熱が三十九度を超えていた。

椎名さんがスマホの通知を切ってくれていたから、気にせず眠れていたのだ。
通知が何度も鳴っていたら、ゆっくり休めなかったと思う。

それは決して口には出せないので、「ごめんね」と言うしかない。


ここでやっと彼の重たかった手が離れた。
ふっと肩が軽くなる。

「椎名さんの連絡先も知ってたから、電話したんだよ」

何気なく言った高橋の言葉に、心が揺れる。

「えっ、なんて?」

「家まで無事に送りました、って。それだけ」

思わずほっとする。

「だから家には帰ってるんだろうなと思ったから、まあとりあえず安心はしてたけど」


名前を聞くだけでも、もはや心臓が痛い。
大きな何かが起きたわけではないけど、私にとっては自分の気持ちを確認できた日だった。


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