最低で大嫌いなあなた、結婚してください

君に捧げる一生の愛

「鞠花、……受け取ってほしい物があるんだけど」

「何ですか?」

 マンションの前に彼が立っていたのを見た時から、手にハイジュエリーブランドのショッパーを持っていたから、ある程度の予想はついていた。

 けれど先に〝話〟をつけ、結論がついたなら、受け入れるつもりでいた。

「こんな話をしたあとに、贈る物じゃないと分かっているが……」

 祥吾は気まずそうに言い、ショッパーからリングケースを取り出す。

 それをパカリと開くと、大粒のダイヤモンドが嵌まった婚約指輪があった。

 室内の照明を反射し、透明な宝石は虹色の煌めきを浮かべる。

「俺と結婚してください」

 祥吾は鞠花の手を握り、真剣な表情で見つめた。

「本当はディナーデートをして、花束を渡して、……最高の舞台を整えてプロポーズするつもりだった。……でも、すべてを打ち明けた今の自分が言うべきだと思った」

 彼の気持ちを汲み取った鞠花は、静かに微笑んだ。

「……はい。お受けします。……あなたの覚悟を見せてください」

 頷いた鞠花の指に、幾らしたか分からない、大粒のダイヤモンドの光が宿る。

 ――私も、この大きな石に見合うだけの覚悟を決めます。

 胸の奥で決意した時、すっかり毒気の抜けた祥吾が言った。

「すぐに迷惑を掛けた人に謝っていきたいと思う。大勢いるから、どれぐらい時間が掛かるか分からない。でもちゃんと謝罪して、そのあとスッキリとした気持ちで結婚したい」

「……はい。私もお付き合いしますね」

 そう言うと、祥吾は目を瞬かせた。

「え? 君は関係ないじゃないか」

 そんな祥吾に、鞠花はにっこりと笑ってみせた。

「私は祥吾さんの婚約者ですから。あなたの責任は私のものでもあります。二人で歩んでいきましょう」

 鞠花の言葉を聞き、祥吾の目に涙が浮かぶ。

「っ~~~~……っ」

 彼女は祥吾の頬に透明な涙が伝うのを見て「綺麗」と思いながら、彼を抱き締めて囁いた。



「私たち二人が紡ぐ未来は、これから始まるんです」



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