この恋、予定外。
変なやつだな
その日の営業フロアの空気は、なにも変わりなく流れていた。

いつも通りの賑やかさ。
キーボードの音が規則的に響いて、誰かの電話の声が遠くで混ざる。コーヒーの匂いも、いつも通り。


その中で、ひとつだけ違うものがあった。


「…森川さん」

呼ばれて顔を上げる。

私より二年後輩の佐野が、タブレットを持ったまま立っていた。

いつも血色のいいメイクをしているのに、それを上回るように顔色が明らかに悪い。

「どうかしたの?」

そう言いながら、椅子を少し引く。

隣に来るように目線で促すと、佐野はぎこちなく一歩近づいた。椅子にも座らない。

「……すみません」

その一言で、だいたい察する。

“すみません”から始まる時は、大体ろくなことじゃない。


「大丈夫だよ。なに?」

声はできるだけいつも通りにする。

焦らせたところで、いいことはひとつもない。それはこれまでの経験で学んできた。

佐野がタブレットを差し出してきた。
表示されているのは、今週から展開予定のバラエティショップ案件の出荷データ。

私は画面を見て、すぐに違和感に気づいた。

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