悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
第一章 悲劇と再会は突然に
「ありがとうございました! またお待ちしております」
美澄つかさは明るい笑顔で帰っていくお客様を見送る。
深々と頭を下げ、見えなくなるまで見送ってからエプロンを外した。
日に焼けたやや明るめのセミロングヘアを束ね直し、カフェのすぐ隣に広がる梨農園へと向かう。
ここは千葉にある「みすみ梨園」。
つかさは曾祖父の代から続く梨農家を手伝っている。
梨園のすぐ隣にはカフェを併設しており、自家製の梨スイーツや梨を使った紅茶が楽しめる。
七月の今は病害虫の予防を行うため、梨の実一つ一つに袋をかける。
「おじいちゃん、手伝うよ」
「ありがとう、つかさ」
この梨農園をずっと守ってきた祖父・典雄は八十を過ぎてもまだまだ現役だ。
誰よりも早く起き、早朝から梨の世話をしている。
「あいたたた……」
「もうおじいちゃん、無理しないでって医師にも言われてるじゃない」
「すまんね」
しかし流石に老体のため、近頃は腰を痛めている。
「おじいちゃん、そろそろ休んでよ。あとは僕がやるから」
そう言ったのは今年大学を卒業したばかりの弟・芯だ。
農園を手伝いながら整体師としても働いている。