悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
この梨農園をずっと守ってきた祖父・典雄は八十を過ぎてもまだまだ現役だ。
誰よりも早く起き、早朝から農園で梨の世話をしている。
「あいたたた……」
「もうおじいちゃん、無理しないでって医師にも言われてるじゃない」
「すまんね」
しかし流石に老体のため、近頃は腰を痛めている。
「おじいちゃん、そろそろ休んでよ。あとは僕がやるから」
そう言ったのは今年大学を卒業したばかりの弟・芯だ。
農園を手伝いながら整体師としても働いている。
「後で腰のマッサージするね」
「いつもありがとう、芯」
農家の仕事は重労働も多いため、体の整備もできるようにと整体師を目指した。
そんな弟のことが、つかさは誇らしくてたまらない。
「小さかった芯ちゃんが立派になって!」
「やめてよ、姉ちゃん。僕もう二十三になるんだよ」
そうは言っても、七歳も年が離れているとつかさの中ではいつまでもかわいい弟なのだ。
夕方まで作業を終えたところで、父の立樹が呼びに来た。
「おーい二人とも。そろそろ帰ろう」
「お父さん」
「今日もお疲れ」
カフェも閉めて自宅に戻ると、既に美味しそうな良い匂いが漂っていた。
「ただいま。すごく良い匂い」
「お帰りなさい。今日の夕飯は梨ソースをかけた肉巻きですよ」
「わあ、美味しそう!」
主に家事を担ってくれる祖母の美津子は、梨を使った料理が得意だ。
豊富なアイデアで美味しい梨レシピを考え、カフェメニューも美津子が考案したものが多い。