婚約者に「いらない」と言われた私が、愛され妻を演じることになりました
果たせなかった約束 SIDE 凌也
「――それで、梶原医師はどうなった?」
「はっきりとは、わかりません」
三峰記念病院との契約は大筋合意に至り、あとはサインをするのみとなっていた。
頑なだった病院側がようやく本条の提案を受け入れたのは、ひとりの医師の存在が大きい。長年海外に渡って最新の医療技術を学んできた、梶原医師だ。
帰国後の彼は都会の大病院ではなく、地方の総合病院への勤務を希望した。それは地方医療の再生や技術の底上げをしたという思いからだ。
三峰に赴任が決まる前の彼は、関西の病院に勤務していた。うちとは、その頃から付き合いがある。
彼はそこで技術を広めるにとどまらず、院内の業務が円滑に進むように新たなシステムを立ち上げて軌道に乗せている。
自分がいなくてももう大丈夫だろうと、次の勤務地を探していたところ、最終的に選んだのが三峰記念病院だ。院長の息子である副院長が、彼にどうしても来てほしいと、渋る経営陣を振り払って梶原医師に直談判したと聞いている。おそらく裏では、梶原医師を巡って相当な引っ張り合いがあったのだろう。
その梶原医師が志半ばで三橋を去ったのだというから、穏やかな話ではない。
「どうやら、うちとの癒着を疑われたようです」
「……そうか」
秘書の一真の返答に、どうしてそんな事態になるのかと苦々しく思う。
梶原医師が三峰に赴任したのは、今から二年近く前になるだろうか。
あの病院に在籍している医師は、長く務めている者が多い。よほど居心地がいいのかと思えば、新たに赴任した若い医師が短期間で出ていくというケースも続いていた。
地域の二次医療機関という立場にありながら、積極的に新しいものを取り入れようとしない。変化を恐れているというより、旨みのある現状を守るために新しさを排除する。三峰の経営陣や古株の医師からは、そんな印象を抱いていた。
梶原医師がその風潮を変えるかもしれないと、期待していたのだが。
うちとの癒着を疑われた以上、早急に手を打たなければならない。それくらいでうちの信頼は揺らがないと自信はあるが、梶原医師を潰してはいけない。
すぐさま梶原医師の行方を探り、副院長にコンタクトをとるように指示を出した。
「はっきりとは、わかりません」
三峰記念病院との契約は大筋合意に至り、あとはサインをするのみとなっていた。
頑なだった病院側がようやく本条の提案を受け入れたのは、ひとりの医師の存在が大きい。長年海外に渡って最新の医療技術を学んできた、梶原医師だ。
帰国後の彼は都会の大病院ではなく、地方の総合病院への勤務を希望した。それは地方医療の再生や技術の底上げをしたという思いからだ。
三峰に赴任が決まる前の彼は、関西の病院に勤務していた。うちとは、その頃から付き合いがある。
彼はそこで技術を広めるにとどまらず、院内の業務が円滑に進むように新たなシステムを立ち上げて軌道に乗せている。
自分がいなくてももう大丈夫だろうと、次の勤務地を探していたところ、最終的に選んだのが三峰記念病院だ。院長の息子である副院長が、彼にどうしても来てほしいと、渋る経営陣を振り払って梶原医師に直談判したと聞いている。おそらく裏では、梶原医師を巡って相当な引っ張り合いがあったのだろう。
その梶原医師が志半ばで三橋を去ったのだというから、穏やかな話ではない。
「どうやら、うちとの癒着を疑われたようです」
「……そうか」
秘書の一真の返答に、どうしてそんな事態になるのかと苦々しく思う。
梶原医師が三峰に赴任したのは、今から二年近く前になるだろうか。
あの病院に在籍している医師は、長く務めている者が多い。よほど居心地がいいのかと思えば、新たに赴任した若い医師が短期間で出ていくというケースも続いていた。
地域の二次医療機関という立場にありながら、積極的に新しいものを取り入れようとしない。変化を恐れているというより、旨みのある現状を守るために新しさを排除する。三峰の経営陣や古株の医師からは、そんな印象を抱いていた。
梶原医師がその風潮を変えるかもしれないと、期待していたのだが。
うちとの癒着を疑われた以上、早急に手を打たなければならない。それくらいでうちの信頼は揺らがないと自信はあるが、梶原医師を潰してはいけない。
すぐさま梶原医師の行方を探り、副院長にコンタクトをとるように指示を出した。