婚約者に「いらない」と言われた私が、愛され妻を演じることになりました

過去を乗り越えて

【クリスマスイブからずっと、旦那に放置されているなんてかわいそうに】

 凌也さんとの電話を切ってしばらくすると、玲奈からメッセージが届いた。

 あの子の言葉に左右されたくない。そう心を強く保とうとするも、彼が昨日から不在なのは事実だ。そして、その近くに玲奈がいることも。
 その理由はわからないけれど、多忙な彼を疑う気持ちは一切ない。

 来年も再来年も、クリスマスはやって来る。凌也さんとこの先もずっと一緒にいられるのだから大丈夫。今年の約束がキャンセルになったくらいで落ち込まないと、そう自身を励ましていた。

【あの男、あんたのせいでこれから大変でしょうね】

 必死で前を向こうとしているのに、玲奈が揺さぶりをかけてくる。

「どういうこと?」

 思わず声に出していた。

 やはり、玲奈や父が凌也さんの仕事の妨害をしているのだろうか。もしそうだとしたら、私が原因だ。

 私と結婚したせいで凌也さんを苦しめていると思うと、居ても立っても居られない。
 瞼をきつく閉じて、わき起こる不安をぐっと耐える。

 玲奈に尋ね返したくてたまらない気持ちを抑え込んでいたが、こちらがなにかを問う前に、彼女の方から続けてメッセージが入った。

【本条ったら、噂になっているわよ。とある医師と手を組んで、不正を行っているじゃないかって】

 あの誠実で厳格な凌也さんが、そんなことをするわけがない。

【あの会社も、もう終わりかもね】

 玲奈は私の不安を煽って楽しんでいるだけ。どこまで本当かなんてわからないのだから、無駄に不安に感じる必要はない。
 そう必死に自分に言い聞かせていたそのとき。反応しない私にしびれをきらしたのか、玲奈から電話がかかってきた。

 本当なら、出ないでおくべきだとわかっている。
 でも凌也さんのことが心配でたまらず、震える手でそっと画面をタップした。
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