没落令嬢ですが偵察の一夜をきっかけに皇太子に溺愛されています

5章 溺愛の始まり

宮殿に戻った途端――空気が変わった。

いつもの廊下。いつもの静けさ。けれど、私の中だけがまるで違う。

「んん……」

人気のない回廊で、突然引き寄せられる。

「アルヴィオン様……!」

抗う間もなく、唇が重なった。深く、甘い口づけ。

「こんなところで……」

息を整えながら、小さく抗議する。

「誰も見ていない」

低く囁かれる声。

そのまま、さらに強く抱き寄せられる。

(近い……)

離れようとするのに、腕は逃がしてくれない。

「だ、ダメです……人に見られたら……」

必死に訴えると、彼はわずかに目を細めた。

「構うものか」

あっさりと返される。

「おまえは元々、公爵令嬢だ。俺の妻になってもおかしくない立場だろう」

「そんな……」
< 41 / 100 >

この作品をシェア

pagetop