社長、その溺愛は計算外です
第8話 誠実さの在り処
金曜の夜から、三日が経っていた。
土日は部屋に引きこもり、カーテンを閉め切ったまま過ごした。
目を閉じれば、彼が最後に見せた痛々しいほどに歪んだ表情が浮かんでくる。
「僕」から「俺」へ。
感情が堰を切った瞬間に漏れ出た、あの一人称。あの言葉の続きを、私はまだ知らない。
月曜日の朝、私は重い体を引きずるように家を出た。
◇
オフィスに着くと、まだ数人しかいないフロアは静まり返っていた。
デスクに座り、パソコンを立ち上げる。無機質なログイン画面が光る中、スマホの通知が震えた。
【今日も一日、頑張ってください。待っています。
圭佑】
先週までなら、世界を明るく照らしてくれたはずのその短い言葉を、私は既読にしたまま、そっと画面を伏せた。
◇
午前十時を少し過ぎた頃、内線電話が鳴った。
「新谷、少し部長室まで来てくれ」
部長の声は、いつになく低く、沈んでいた。
部長室のドアを叩くと、彼は険しい顔でデスクの上の資料を見つめていた。
「新谷、座ってくれ」
部長が厳しい表情で、私を見た。
その手元には、見慣れないロゴの入った一通の書類。
何だろう……。