社長、その溺愛は計算外です

第8話 誠実さの在り処


金曜の夜から、三日が経っていた。

土日は部屋に引きこもり、カーテンを閉め切ったまま過ごした。

目を閉じれば、彼が最後に見せた痛々しいほどに歪んだ表情が浮かんでくる。

「僕」から「俺」へ。

感情が堰を切った瞬間に漏れ出た、あの一人称。あの言葉の続きを、私はまだ知らない。

月曜日の朝、私は重い体を引きずるように家を出た。



オフィスに着くと、まだ数人しかいないフロアは静まり返っていた。

デスクに座り、パソコンを立ち上げる。無機質なログイン画面が光る中、スマホの通知が震えた。

【今日も一日、頑張ってください。待っています。
圭佑】

先週までなら、世界を明るく照らしてくれたはずのその短い言葉を、私は既読にしたまま、そっと画面を伏せた。



午前十時を少し過ぎた頃、内線電話が鳴った。

「新谷、少し部長室まで来てくれ」

部長の声は、いつになく低く、沈んでいた。

部長室のドアを叩くと、彼は険しい顔でデスクの上の資料を見つめていた。

「新谷、座ってくれ」

部長が厳しい表情で、私を見た。

その手元には、見慣れないロゴの入った一通の書類。

何だろう……。
< 102 / 171 >

この作品をシェア

pagetop