社長、その溺愛は計算外です

第12話 君が育った場所へ


十二月の第一週が過ぎた。

「梓」

ある夜、食事をしながら圭佑さんが言った。

「そろそろ、君のご両親にご挨拶に伺いたい」

「……本当に?」

「当然だろう。桐原家への挨拶は済んだ。次は、梓のご両親だ」

順序を踏む。それが、この人らしかった。

「分かった。連絡してみます」

スマホを取り出して、母にメッセージを送った。

返信は、三分後に来た。

【いつでもいらっしゃい。楽しみにしてます!】

その文面に、絵文字が三つついていた。

「お母さん、乗り気です」

「それは……良かった」

圭佑さんが、息を吐いた。

「父の方が、心配ですか?」

「ああ」

即答だった。

「梓の話を聞いていると……芯のある、頑固な方だと思って」

「似てるからじゃないですか、私と」

「それは気づいていた。だから余計に、怖い」

その正直さが可笑しくて、私は笑ってしまった。

あの桐原グループ会長と対峙した人が、私の父を怖がっている。

でも、それが愛しかった。



土曜日。

埼玉の実家へ向かう電車の中で、圭佑さんはいつもより口数が少なかった。

膝の上で、両手を組んでいる。車窓の景色を見つめているようで、どこも見ていないような目をしている。

「圭佑さん、緊張していますか」

「……している」

「何が心配なんですか?」
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