社長、その溺愛は計算外です
第12話 君が育った場所へ
十二月の第一週が過ぎた。
「梓」
ある夜、食事をしながら圭佑さんが言った。
「そろそろ、君のご両親にご挨拶に伺いたい」
「……本当に?」
「当然だろう。桐原家への挨拶は済んだ。次は、梓のご両親だ」
順序を踏む。それが、この人らしかった。
「分かった。連絡してみます」
スマホを取り出して、母にメッセージを送った。
返信は、三分後に来た。
【いつでもいらっしゃい。楽しみにしてます!】
その文面に、絵文字が三つついていた。
「お母さん、乗り気です」
「それは……良かった」
圭佑さんが、息を吐いた。
「父の方が、心配ですか?」
「ああ」
即答だった。
「梓の話を聞いていると……芯のある、頑固な方だと思って」
「似てるからじゃないですか、私と」
「それは気づいていた。だから余計に、怖い」
その正直さが可笑しくて、私は笑ってしまった。
あの桐原グループ会長と対峙した人が、私の父を怖がっている。
でも、それが愛しかった。
◇
土曜日。
埼玉の実家へ向かう電車の中で、圭佑さんはいつもより口数が少なかった。
膝の上で、両手を組んでいる。車窓の景色を見つめているようで、どこも見ていないような目をしている。
「圭佑さん、緊張していますか」
「……している」
「何が心配なんですか?」