アンコールは君だけに ~孤高のピアニストと秘密の契約婚~
chapter,6
軽井沢に向かう新幹線の中、紬希は窓の外を眺めていた。
七月の終わり。東京の蒸し暑さが嘘のように、車窓の景色が少しずつ緑を深めていく。
「初めてか、軽井沢は」
隣で奏が意外そうに口をひらく。手元には楽譜。だが、視線はこちらに向いていた。
「はい。ずっと来てみたかったんです」
「公演が終わったら、時間が取れる」
「え」
「案内してやる」
それだけ言って、楽譜に視線を戻した。
――観光、させてくれるんだ。
紬希は窓の外に視線を戻しながら、密かに胸を弾ませる。