あと30日で、他人に戻るふたり

7日目 キャベツとピーマン

ランドリーラックが初登場したおかげで、朝の動線が見事にスムーズになった。


いつも先に電源を入れて温めておいているヘアアイロンを、彼が誤って触ることもなくなった。

タオルを一時的に掛けておけるようにもなり、便利なことこの上ない。


朝から新しいラックに感心してしまった。


「快適になりましたね、朝が」

「買ってよかった」

私が髪をアイロンする隣で、彼はワックスをつけている。

あんなに飛び跳ねていたはずの寝ぐせが、すんなりと言うことを聞いて大人しくなっていくのを初めて見た。

鏡越しに思わず見入ってしまった。


「魔法みたいですね」

「うん。いいでしょ。もう何年も同じの使ってる」

「私はいっつも新商品買っちゃいます…」

「……そういうタイプか」

棚に置いてあるヘアオイルも、初めて買ったものだ。

彼も鏡越しにこちらを見てきた。
なんかちょっと、呆れたような目で。

対抗するように言い返す。

「トレンドとかあるんですよ、こっちは」

「たぶん男もあるよ。興味ないけど」


彼は手を洗うとさっさとリビングへ戻っていった。


鏡に映る自分の顔を、なんとなく見つめる。


────名前で呼んだことを、思い出す。
あれは、なんだったんだろう。


特に意味なんてないはずなのに、少しだけ引っかかっていた。



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