あと30日で、他人に戻るふたり
23日目 私だけ
翌朝、寝室のドアを開けると。
もうリビングは明るかった。
カーテンも窓も開いていて、少し涼しい。
今日もまた、気持ちがいいくらいに晴れていた。
リビングのソファには大地さんが座っていて、コーヒーを飲んでいる。
その手にはスマホがあって、挨拶より先に「……あ、」と声が漏れた。
「昨日、スマホ忘れてましたよ」
「あぁ、おはよう」
彼は私に気づくとすぐに反応した。
慌てて私も「おはようございます」と返す。
「スマホなくて、呼び出しの仕事は大丈夫だったんですか?」
私もキッチンでコーヒーを淹れながら、コップを取り出して尋ねてみる。
向こう側から、朝の気だるそうなあまり気のない返事が返ってきた。
「うん、基本的にパソコンあれば特に問題はない。…でも、忘れたことに気づいた時にはもう現場にいたから。めんどくさくて取りに戻らなかった」
「スマホ人間だと思ってたんで」
「そうなんだよねー。俺も思ってた」
「なんでそんな他人事みたいなんですか」
「ほんとだよね」
ブラックコーヒーにミルクだけ入れて、リビングに戻ると彼は持っていたスマホをテーブルに伏せた。
「デジタルデトックスに行ってきた方がいいんじゃないかと思うくらいには、ずっといじってましたよね?」
そんなふうに追求してみても、彼はソファの背にもたれて視線はテレビに向いたまま。
「…自覚ないや」
「そういうものなんですかね」
話しながら、昨日は何時に帰ってきたんだろう、とか思う。
ちょっと眠そうで、疲れているような顔をしている。
でもなんだか、「大丈夫ですか」と聞くのも違う気がして聞けない。
簡単に朝食を済ませた私たちは、いつものように洗面所を譲り合いながら仕事へ行く支度を進めていく。
なにも変わりない、毎日の光景。
最初の頃みたいにドタバタしなくなった、慣れた空間。
着替えてバッグを肩にかけた私がリビングに出るタイミングで、ちょうど彼も出かける準備を終えたのかソファから立ち上がるのが見えた。
「じゃ、行こっか」
「はい」
ごく自然に、ふたりで玄関に向かい、順番に靴を履く。
────今日って、何日目なんだっけ。
たぶん彼が出ていくまでもう、そんなに日数はないはずだ。
こうして一緒に家を出るのも、もう残り少ない。
そんな気持ちに背を向けて、
「今日はちゃんとスマホ持ちました?」
と聞いてみる。
玄関のドアに手をかけた彼が、スマホの所在を確認するでもなく笑う。
「……たぶん?」
「ほんっと適当なんだから」
くだらない話を続けつつ、玄関のドアを開けた。
••┈┈┈┈••
もうリビングは明るかった。
カーテンも窓も開いていて、少し涼しい。
今日もまた、気持ちがいいくらいに晴れていた。
リビングのソファには大地さんが座っていて、コーヒーを飲んでいる。
その手にはスマホがあって、挨拶より先に「……あ、」と声が漏れた。
「昨日、スマホ忘れてましたよ」
「あぁ、おはよう」
彼は私に気づくとすぐに反応した。
慌てて私も「おはようございます」と返す。
「スマホなくて、呼び出しの仕事は大丈夫だったんですか?」
私もキッチンでコーヒーを淹れながら、コップを取り出して尋ねてみる。
向こう側から、朝の気だるそうなあまり気のない返事が返ってきた。
「うん、基本的にパソコンあれば特に問題はない。…でも、忘れたことに気づいた時にはもう現場にいたから。めんどくさくて取りに戻らなかった」
「スマホ人間だと思ってたんで」
「そうなんだよねー。俺も思ってた」
「なんでそんな他人事みたいなんですか」
「ほんとだよね」
ブラックコーヒーにミルクだけ入れて、リビングに戻ると彼は持っていたスマホをテーブルに伏せた。
「デジタルデトックスに行ってきた方がいいんじゃないかと思うくらいには、ずっといじってましたよね?」
そんなふうに追求してみても、彼はソファの背にもたれて視線はテレビに向いたまま。
「…自覚ないや」
「そういうものなんですかね」
話しながら、昨日は何時に帰ってきたんだろう、とか思う。
ちょっと眠そうで、疲れているような顔をしている。
でもなんだか、「大丈夫ですか」と聞くのも違う気がして聞けない。
簡単に朝食を済ませた私たちは、いつものように洗面所を譲り合いながら仕事へ行く支度を進めていく。
なにも変わりない、毎日の光景。
最初の頃みたいにドタバタしなくなった、慣れた空間。
着替えてバッグを肩にかけた私がリビングに出るタイミングで、ちょうど彼も出かける準備を終えたのかソファから立ち上がるのが見えた。
「じゃ、行こっか」
「はい」
ごく自然に、ふたりで玄関に向かい、順番に靴を履く。
────今日って、何日目なんだっけ。
たぶん彼が出ていくまでもう、そんなに日数はないはずだ。
こうして一緒に家を出るのも、もう残り少ない。
そんな気持ちに背を向けて、
「今日はちゃんとスマホ持ちました?」
と聞いてみる。
玄関のドアに手をかけた彼が、スマホの所在を確認するでもなく笑う。
「……たぶん?」
「ほんっと適当なんだから」
くだらない話を続けつつ、玄関のドアを開けた。
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