あと30日で、他人に戻るふたり

番外編 「これがいい」

真夏の、とある日曜日。


朝から当たり前に暑くて、最高の洗濯日和。

シーツもタオルケットもバスタオルも枕カバーも、なにもかも洗いたい。

……ってことで、まだ寝ている大地さんを転がして、ベッドから寝具を引っ張り出して洗濯機を回しまくる。


ベランダに全部干し終わったところで寝室を見ると、まだ彼は床で寝ていた。


「大地さーん、寝るならソファの方がよくないですか?」

昨日の夜に呼び出しがあったから、何時に帰ってきたのか。遅かったんだと思う。
だから泥みたいに眠っている。

私が声をかけても、ぴくりともせず寝ている。


まあ、そのうち目を覚ますかもしれないし。

────と、いったんキッチンで水分補給をした。


ここ二週間くらい、ずっと晴れている。
時々夕方にゲリラ豪雨もあったりするけれど、毎日毎日しつこいくらいに暑い。


ふとポケットに入れていたスマホが震えて、なにかメッセージかと思ったら。

『着信 優奈』

という文字。


電話なんて、珍しいな。

そんなことを思いながらスマホを耳に当てた。


「優奈?おはよー。どうしたの?」

“おはよう”というほど朝早くもなく、なんならもう少しでお昼になりそうな絶妙な時間。


『おはよ!……ねぇ、美月いま家にいる?』

「いま?いるよ」

『あっ、ほんとー?今から行くねー!』


ものすごい軽い口調で、さらっと言われて。

オッケー!とか返しそうになってしまったけれど思いとどまる。


「────“今から行くね”?」

『今さあ、ちょうど駅に着いたの。歩いてすぐだもんね?マンション』

「えっと、あの、」

『何号室だっけ?』

「805……」


言ってから、激しく後悔した。



< 394 / 403 >

この作品をシェア

pagetop