あと30日で、他人に戻るふたり
そこからの私は、たぶん早送りモードだったと思う。

瞬間移動で寝室に行って、床で寝ている大地さんに飛び乗る。

「ちょっと!早く!起きてください!」

「まだ……もうちょい……」

飛び乗ったのに、びくともしない。
目も開けない。


「はやくぅぅぅ…、急いで顔洗って!寝ぐせ!直して!服も着替えて!持ってる服で一番おしゃれなやつ!」

「…なに言ってんの」

「もうすぐ会社で一番仲のいい同期が来るって言ってて」

「どこに?」

「ここに…」

「……大丈夫。気配消してそのへんにいるから」

さすがに起き上がった大地さんが、今度はソファにごろんと寝転がった。


……くそっ、寝室からリビングに出たはいいものの、逆にダラダラしてるのが丸見えだ!

また寝ようとしている大地さんの腕を、力づくで引っ張っる。


優奈に彼を会わせるんだったら、彼氏としてよく見せたいというよりも、まず。

人類として整えたい!!


「だめだってば!起きて!顔洗う!寝ぐせ直す!服着る!やって!」

「めんどくさい…」

「顔洗って!」

「……減ったね」


要求を減らしたら突然スイッチが入ったみたいに起き上がって、顔だけは洗いに行ってくれた。


私がじぃっと洗面所を見張ってることを鏡越しに気づいたらしい大地さんが、まだ眠そうな顔で首をかしげる。

「なにがそんなに気になるの」

「私の両親に会うくらいの気持ちでいてくださいね?」

「───えっ?」

さすがに、彼の声色が変わる。


「私の同期、すごいんですから…」

脅すつもりで言ったわけじゃないけど、若干、さっきより大地さんの目が覚めたのが見てよく分かる。


「…美月の親ってそんなに癖強いの?」

……いま気にするのそこじゃねぇ!

「まだ時間間に合うから!Tシャツだけでも変えてください!ついでにスウェット脱いで!」

「休みの日くらい楽な格好でいいじゃん…」


もっともな正論を述べた大地さんは、結局寝ぐせも直さず、服も着替えてくれなかった。



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