彼と彼女の、最大の不具合
右京天音の場合
右京天音27歳。
研究開発部・製品化設計、量産最適化チームに所属している。「いいものでも成立しなければ意味がない」がモットーで、感情より継続可能性を重視した超合理主義人間である。
「へへ。右京くん、私もね…ほんとはいつも怒ってばかりでごめんねって思ってるんだよ?」
照れくさそうに笑ったかと思えば、次の瞬間には少しムッとしたように唇を尖らせる、そのくるくると忙しく変わる表情に、今日もまた俺は完全に目を奪われてしまっている。
まるで視線を外したら何か大事な瞬間を見逃してしまいそうで怖いくらいに、自然と彼女ばかりを追ってしまう自分がいる。
久しぶりにこうして一緒に飲みに来たからなのか、それともただ単に今日の香坂の機嫌がいつもより緩んでいるだけなのか、グラスを傾けるペースが明らかにいつもより早い気がする。
「香坂。お冷も頼む?」
さりげなく声をかけてみるけれど、どちらかというと俺たちは酒には強いほうで、これまでだって酔い潰れるなんてことはほとんどなかったし、ましてやドラマや漫画でよく見るような、酔った勢いで誰かを家に連れ帰るなんていう展開は、現実の俺たちには一度も起こったことがない。
もちろん、香坂のことを持ち帰ろうだなんて、そんな下心みたいなものを抱いたことなんて一度もない……いや、本当に、そういうことは考えたことはないんだけど。
香坂はわざとらしくムッとした顔を作って、頬をほんのりと膨らませてみせた。
「私が、酔ってると思ってるの?」
不満げに言い返してくるその声は、いつもより少しだけ柔らかくて、アルコールが回っているのか、瞳はしっとりと潤んでいて光を含んでいる。