彼と彼女の、最大の不具合



「(か、かわいい~…)」


いや本当に、なんだこの生き物は。同じ空気を吸って同じ言葉を話しているはずなのに、どうしてこんなにも破壊力があるんだ。こいつ本当に俺と同じ人間なのか?


「明日も仕事だし。今日はここらへんでやめとこう」


つい可愛すぎてまともに見ていられず視線を逸らしながらそう口にすると、隣でその可愛い生き物が小さく震えているのが分かる。

怒っているのか、それとも拗ねているのか、そのどちらにしても結局可愛いという結論にしかならないのがまた厄介。


「右京くんより私のほうがお酒強いもん」


子どもみたいに張り合ってくる香坂に、どこで勝負してるんだと内心ツッコミを入れつつも、これ以上そんな顔や仕草を見せつけられたら、いくら理性を保とうとしている俺でも、ふとした拍子に手を伸ばしてしまいそうになる。

その距離感の危うさに自分で少し焦るくらいで、けれど当の本人は俺がこんなことを考えているなんて夢にも思っていないんだろうな。


「なぁ、あの子可愛くね?」

「バカ、彼氏いんだろ」


なんて軽い声が後ろの卓から聞こえてきて、思わず眉がぴくりと動く。

そんなの言われなくても分かってるだろうが、香坂が可愛いのは当たり前だ。誰が見たってそう思うに決まっている。

色素の薄いさらりとしたロングヘアに、くりっとした大きな丸い瞳。

すっと通った綺麗な鼻筋に、小さくて柔らかそうな唇。透き通るような肌には余計なものなんて何一つなくて、ホクロひとつ見当たらないくらいに整っている。

そのうえ華奢な体つきで、細い腕なんて少し力を込めたら折れてしまいそうだと錯覚するほど。


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